キリリク・記念

□二万打記念小説
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「ここが…“呪いの森”か」

目の前に広がるは、生い茂る樹木の集まり。

すでに数メートル先が暗闇に包まれ何も見えない。

入る者を惑わせ、道を見失えば最後、二度と出てくることのない“魔の森”。

この森に数ヶ月前から見たことのない化け物を目撃したという報告が城に相次いでいる。

その姿は、闇夜に光る二つのアメジスト。身の丈は三メートルを優に越え、鬣と牙を持つ。

まさに『化け物』だったという。


何度も討伐隊を送ったが、兵士たちは森に迷い、化け物を退治するどころではなかった。

森に住むという不思議な少女に道案内を頼む案も出たが、少女は数ヶ月前━━あの化け物が目撃されたと同時に姿を消してしまっていた。

「噂では少女は既に化け物に喰われ、化け物の紫の瞳がその証だと言われている……か」

そして化け物からの被害がないこと、森で化け物の発見が不可能なことからこの件は、ほぼ終わりと王は見做している。

「一時は森を焼き払うという意見も出ていたが、ここは珍しい動植物や国外に輸出する貴重な木材もあるため、薬師や大臣たちの反対意見も多く、この案は否決された…」


報告書を一通り読んでから、もう一度呪いの森を見上げるアスラン。

「よし!行くぞイージス」

気合いの掛け声を上げて愛馬の手綱を引き、いざ出陣!


……ところが愛馬のイージスは主の思いとは逆に首を左右に強く振り、行くのを拒否していた。



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