キリリク・記念

□二万打記念小説
8ページ/13ページ




「…化け物は何処だ。せっかく王子自らが討伐しに来てやったというのに」

きょろきょろと辺りを見回して不服そうに口を尖らせる我が主。

(…アスラン様、退治されるのにノコノコ出てくる奴はいませんよι)

森に入って三十分。
当たり前だが、噂の化け物は見つからない━━というか、そんなに早く見つかれば、討伐隊も苦労はしていない。



奥に進むにつれ、霧が濃くなり徐々に道も分からなくなってきた。

今ならまだ引き返せる。

そう思ってもこの主は絶対引き返さないだろう。

(プライドだけは高い人だからなぁ…)


“呪いの森”が恐れられているのは化け物や迷わされる周囲の景色だけではない。

化け物が発見され、恐れられる要因の一つになったのは、つい最近のこと。

この森には大昔から狼や熊といった多くの肉食動物が住み処としている。

化け物の噂ばかりが目立って忘れがちだが、真に恐ろしいのは彼らなのだ。

化け物退治の事しか頭にない、今のこの王子はその事実を忘れている。

集団で狩りをする彼ら相手に、駿馬と名高い自分でも逃げられる可能性は五分と五分。

願わくば、このまま化け物にも狼や熊にも出会うことなく、主が早々に興味を無くすのを祈るばかり……。



━━だが、その数分後。
イージスの願いは、無残にも打ち砕かれた。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ