Story
□ウサギとオウム
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「ねぇ、お兄さん。名前は?職業は?彼女いる?好きなAV女優はー?」
無口そうに見えるが、なかなか口は立つようで、ホストに間違いなさそうだと思う反面、その達者な口からはツッコミを入れたくなるような質問も幾つか聞かれたが、小さくため息をつきながら律儀に答えようと思っている俺は物好きだろうか。
「…名前は吉谷駿(ヨシタニスグル)。職業は外資系だ。彼女は居ない。…。とりあえず、お前は誰なんだ。」
「オレはねー。この辺にあるラバーズガーデンって店のNO.2ホストやってます。アキラでーす。年は24だよ、よろしくースグル。」
いや。あまりよろしくしたくないんだが。
そしていきなり名前を呼び捨てにするな。
そうは思うが口に出さない。
こうしてポーカーフェイスを突き通すのも出世するには必要な要素だと俺は思っているし、もはや習慣となっている。
「あー。コイツ慣れ慣れしとか思ってるんでしょ。」
「!」
「…驚いてる。っていうか、スグル、今から暇?」
あっさり心をよまれ、そして今から暇か?だと。
「暇じゃない。家でやることがある。」
「どうせ溜まった洗濯物でも洗おうとか思ってるんでしょ。」
何から何まで言い合ててしまうコイツは何なのだろうか。
俺よりも3つも若いが、さすがホストと言うだけあって、察しが良いと言うかなんと言うか。
「…はぁ。そうだが何か問題でもあるのか?」
「えー。俺のお客になる気ないかなーって。」
ニコニコしながらい言い放った言葉の重さにコイツは気付いているのか。
そもそも、自分から男を客にしようなんてどういう類のホストなんだと、軽く疑う。
「お前…そっちの世界のホストなのか?」
「お前じゃなくて、アーキーラー!
違うよ。オレ個人がバイなだけで、店は普通にノーマルな人ばっかり。」
"だから常連さんは女の子ばっかり"と言ってクスッと笑うと、へニャリと首を傾げてみせる。
「…男とどうとかっていう趣味ではないんだが…。」
「えーいいじゃない!スグルお金持ってるんでしょー?ちょっとくらい変った遊びに手出したって大丈夫だって!」
いやいや。"変な遊び"だってわかってるならそんな事言うなよ。とオレは思う。
そもそも、コイツは男の客なんかが居て何かいいことがあるのか?それに、NO.2とは言え、モテるならわざわざ男に声をかける必要も無いだろう。
「なんかさぁ、スグルが目に留まったっていうか…。まぁ理由はいいからさ、どう、客になってくれるの?なってくれないの?」
このよくわからない、俺が27年間生きてきた中で、初めてのタイプのこの男に、俺が多少興味を持ったのは間違い無い。
この際、細かいことは気にしない。
この平凡な毎日を壊してくれるなら
何でもいい。