Story

□ウサギとオウム
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 俺の話を聞いていた明はポカンと口を半開きにしたまま凝視してくる。
 止めてくれ…。なんだか恥ずかしい。


「ただなんとなく気になって声かけたお前に…今度は俺が声かけられるとは思ってなかった。」


 俺がポツりとそうこぼせば、明も“オレもだ”と言って小さく笑った。

「さて…昔話はここまで。寝ろよ。」

 ハニーブロンドの髪を撫でながらポケットの中のタバコを取り出す。

「…なぁ、スグル。一緒のベッドで寝るんだろ?」


「いや。俺は今日も下に布団しくからいいんだ。何時もどおりでいい。」

「オレがよくないの!」

「…我侭言うな。寝るぞー。」


 寝室の隅にたたんでおいてある布団をしきながら、口に加えたタバコを落とさないように器用に喋る。

 布団の用意が終ると、タバコを吸いにベランダへの窓を開け、寝室からベランダへ出た。
 ベランダはリビングと寝室から出ることができる作りになっている。


「やけに明るいと思えば…満月だったか。」


 火をつけたタバコを吸い、肺に紫煙を送りながら月を仰ぎ見た。


「…ねぇスグル。」

 ベッドの上に寝転んでいる明が開けっ放しの窓の向こうにいるオレに声をかけてくる。



「ん?どうした?」


「あのさ、出かける約束してたじゃない?」
「ああ。」

「何処に連れてってくれるつもりだったのー?」


 繁華街で声をかけてきた頃、そして先ほどの車の中での表情が嘘のように柔らかいのそ表情で明はオレに問う。


「………



 ナイショ…だ。」


 くくっと小さく笑いながら俺が答えると明は不満そうに眉間に皺を寄せて、頬を膨らませて見せる。
 大の大人がそんなことしても可愛くはない。

 と、思うのが普通なのだが、何年ぶりかにするまともな恋はどうやらオレの頭の回路までおかしくしてしまったらしい。

 “愛しい”と言う感情はこういうものだったな。そんな事を思いながら久しぶりの感覚に鳥肌が立った。



 勝手ながら俺は決めていたんだ。
 お前に惚れたんだと気付いた日に。


 お前と同じベッドで寝るときは俺とお前が特別な関係になれた時だってな。


 だから、そんな寂しそうな目をしたって俺は許してやらない。
 もっと俺を欲しがって、俺が必要だって言ってくれ。

 多くは望まないって思ってたけど


 本気になってしまったから


 お前が俺を客だと言ううちは…俺を好きだと言うまでは…


「さて、寝ろよ。明日は一応出勤だろ?」


 ふわりとした髪を撫でて、拗ねたようにむくれる明の頬を夜風ですこし冷たくなった手で撫でてやると




「…おやすみ」

 小さな声で明は囁いた


「ああ。お休み。」


 


 俺の大事な、気まぐれウサギがいい夢を見れますように。
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