Story
□Fractus
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「瑞樹。お母さんね、お父さんと離婚することにしたの。」
何を今更。
そう思う。
元々2人とも海外に出払っていて家に帰ることなんてなかったくせに。
今更どうしたいんだ。
「貴方はお母さんが引き取ることになったから。それでね、来年には東京の高校に編入することになると思うから、ちゃんと勉強しとくようにね。」
無機質な箱から聞こえる母の数ヶ月ぶりに聞く声はどこか晴れているようだった。
そんな事は関係ない。
どちらが俺を引き取ろうと、俺はもうあんたたちに心を開くことは無い。
現にこうして今も、受話器を目の前にしてもそれを取る気にもならず留守電のメッセージとして耳に入れるだけ。
「じゃ、来月には一度戻るから、その時にもう一度だけ家族で食事でもしましょうね。また電話するわ。」
母は息子が出ないことも気にする様子すら見せず電話を切った。
「……カウントダウン…開始…か。」
"Fractus〜見上げた空に〜"
何となく受験した私立の進学高校の入学式。
なんだか気がのらなくて早速サボって敷地をうろうろしていた俺は、ある先輩に出会った。
その人はさらさらと揺れる黒髪に隠れたピアスだらけの耳、白い肌はサクラの色をよりいっそう濃く、綺麗に見せていた。