Story

□熱線
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 感じる視線はどこからか
 
 僕にはわからない。

 ただソレはどこか熱を帯びた視線で


 僕の影のようにそっと

 けれど確かに存在した。



熱線


 日に日に強くなっていく日差しに、僕はうんざりとしながら、まだ誰もいない教室の自分の席につきだらりと体を机に預ける。

 僕は他人の目から見れば可も無く、不可も無く。無難で普通。どこにでもいる、ちょっと華奢なオシャレ眼鏡が特徴の高校生だ。
 ほかに特徴があるとすれば体が弱く、年中休み気味。体育なんてものでまともに走っているのを見たこともない。
 
 そんな感じではないだろうか。

 別に、僕は生まれてコレまでの間、弱い自分の体を悔やんだことも、悲観したこともない。だってそれは僕にとって当たりまえで、他人にどうこう言われたところでそう簡単に改善できることでも無いとわかっていたから。


 何故僕が自分の体質の事についてここで述べるのかと問われれば、彼と僕の比較をするために必要だったから。と答えるのが一番適切だと思う。

 彼こと、吉田清杜(よしだきよと)君は僕とは全く逆の性格、容姿をしている。
 健康的に日焼けした体に爽やかな笑顔。兄にしたくなるような面倒見の良さ。そしてクラスの人気者で、水泳部のエースである。

 僕に無いものばかりをもっている彼と僕の接点はやっぱり見当たらない。ただのクラスメイト。それだけだ。


 ふとうつぶせにしていた顔を上げ、窓の外へ視線を向ける。

 まばらに登校してくる生徒達の姿が見えるが、その中に彼は居ない。
 僕の数少ない友人の話によると彼は水泳部の朝練習で筋トレをしているらしく、朝は早く学校に来ているそうだ。

 そういえば、僕が彼の存在を知ったのは、去年の今時期だった事を思い出す。
 ただ違うのは僕等はクラスメイトとなり、そして今日ほどその日は暑くなかったということくらいではないだろうか。
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