NOVEL

□愛さない
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愛さない


勿論だ 誰が愛すか



アイツは敵だ


俺は 愛さない









“愛してる”と言えない














「―…OVERさん」


「……おう」

時々アイツは夜中に俺に会いに来る。
…いや、俺が会いに行っている。


満月の晩に。
合図はこれだけで良かった。









「…逢いたかった…」

桜色の少女は俺の胸に舞い降りた。


「―……俺もだ」



「満月が出るの…私毎晩毎晩待ってた…」

俺は、俺の中の小さな少女を抱き締める。
少し力を入れれば壊れてしまいそうに細く、小さいから、優しく、優しく。







「…お前、また少し痩せてねぇか?」

「ぇえ?そんな事ないよ」


「アイツ等に付き合って無理して、ロクにものが喰えてねぇんじゃねぇのか?」


「―…大丈夫」





少女はそう言って、俺の長い金髪に顔を埋めた。

「…ホントかよ」


「ふふふ、きっとOVERさんがまた一段と鍛えているからだよ」

「…………」



「きゃっ…!?」

俺は少女を抱き上げる。



「軽……。お前がぜってー痩せたんだ。…ちゃんと喰えよ」



「……………ハイ」







そのまま少女を膝に乗せると、丁度良い切り株へと腰を下ろす。


少女は俺を見つめる。
その大きくて青い瞳に俺は弱かった。




「―…………」


そしてその瞳が、何を欲しているのかも分かっていた。





「………淋しかった」


「………ああ」








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