NOVEL

□fly high
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ゆっくりと手を伸ばし

風に触れ




羽ばたけたらいい









この青々とした大空に

















夏が終わる香りがした。






「ランバダさん」


「―…おう。」




真っ白の、極めて軽いワンピースを着た女が、ゆっくりと近付いてきた。

俺は緩みそうになった頬の筋肉を引き締めると、恐々歩く女の手を取った。


「こ、怖いよ〜」

「んだよ、相変わらずのか弱さだな」


「…っ誰だってこんな所怖がるよ〜」






…そうか?


ここは、地上約95メートル程の69階建てビルの屋上。

爽やかな快晴と時折吹く風が気持ちいい。




「何でいつもランバダさんは、こんなめちゃくちゃな待ち合わせ場所を指定するのよ…」


「いいじゃねーか。ビュティが落ちたらちゃんと拾ってやるよ」


「っ…そういうことじゃなくて〜」





余程怖いのか、ビュティは俺の背中に抱きついて離れない。

…いちいち可愛いなチクショー。










「…今日は何て言って出てきたんだ?」


「―…買い物に行ってくるって…。」



「はは、奴らついて来ようとしなかったか?」


「したよ、大変だった…」








―…俺とビュティは、周りには秘密の関係ってヤツで、敵同士であることにも関わらず、愛し合ってしまった訳だ。

ま、敵同士といっても、以前ボーボボには(カナリ不本意だが)救われた例があるわけで…、別に公言したって俺はいい訳なんだが、ビュティがそれを憚った。




『だって恥ずかしいじゃない』


女心ってのは複雑で、俺には何が彼女にとっての羞恥なのかさっぱりだった。





…けど、ま、アイツが嫌っつーなら俺も秘密にしといてやる訳。

(周りに秘密って状況も、なかなかのスリルと背徳感があって愉しい)










「ランバダさんは高い所が好きなの?」

「あ?まぁな。少しでも空が近い気がして気持ちいい」


「!へぇ…、」








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