NOVEL

□Loseo
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まるで小さく泣いている様な


くしゃっとした 笑顔も






よく迷子になる



小さな手も 俺は












愛しいんだと思う















「また何か無くしたの?」



「―……。」



その桜色をトップで団子結いした少女が、少しだけ困った様にそう言った。
俺はオンザロックのアイラモルトを一口飲んだだけだった。



「…先日買ったばかりの万年筆を無くした」

「え〜?あれ?勿体無い〜」


「…また買えばいい。同じものを作らせる」







「―…3世さんの悪い所だね」



「………」





俺はよく物を無くした。

どこに置いたか忘れる様な、人間の様な愚行は、帝王の俺様はしない。


ただ、いつの間にか無くなっているのだ。





「また買えばいい、何て、ダメだよ」


「無くなってしまうんだ。買うしかないだろうが」



ふう、と溜め息を吐いたビュティは、読書を止め俺の隣に腰掛けた。

このワイン色のソファは俺のお気に入りで、ビュティと自分以外は座らせなかった。







「もっと大切にしなきゃ。このソファみたいに、物を」


「―……。」



「じゃなきゃ、3世さんの大切なものまで無くしちゃうよ?」




俺の真っ赤な髪が、氷の小さな面積に映った。










「ビュティ、も、」



「ん?」








「お前も、私の側から居なくなるのか」




「―…!」









暫く沈黙が流れた。







だがそれを裂いたのはビュティで、笑い声が、あくまで真面目だった俺に充分転ける要素を与えた。



「ふふふっ、―私は物じゃないよ〜」



「それはそうだが…」








「ふふ、でも、3世さんが私を投げやりに扱ったら、どこかにいっちゃうかもね」



「!そうなのか?!」




「ええ?あはは、冗談だよ〜」





俺が随分小さな頃に、「お前は冗談が通じない」と言われたことを思い出した。



会話を楽しむものとして認識していなかった俺は、冗談など要らなかった。









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