NOVEL

□Why
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すると北からぴゅうっと冷たい風が吹き付けて、私の身体は思わず縮こまった。


私の、白いロングニットカーディガンの裾が風で翻った。





「寒いか?嬢ちゃん」

「…ううん、平気…」



「〜…くしゅんッ」






「……」


「……」





「っ…はは!やっぱ寒いんじゃねーか」


破天荒さんは声を出して笑うと、私の頭をがさつに撫でた。


「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか」





…でも、何だか珍しいと思う。
彼がこんな風に笑うのは久しぶり。


…ちょっと嬉しいかも。







「まだ初冬なのに…今日は冷え込みますね」


私はそう言って、破天荒さんからのマフラーに顎を埋めた。

相槌を打った彼は、カーキ色のダウンコートの、開いていたジッパーを上まで上げた。




「―……」


彼は何か言いたそうに口をもごもごさせていたが、結局何も言わないので私は裾に消え行く夕焼けを見ていた。



でも私が、かじかんだ自分の掌に息をかけていると、彼は口を開いた。









「…あ"〜……て!」




「…?……て?」







「〜…手。つ、冷たいよな。…………つなごーぜ?」





「……は、はい」






彼は私の手を掴む様に握ると、そのまま自分のダウンのポケットに繋いだ二人分の手を突っ込んだ。


「……。」







普段、ほとんど照れもせずにキスもベッドも誘うのに、まるでこんな中学生の行為を彼は大いに照れた。


私はそんな彼が再び、可笑しくて可愛くて愛しくて、クスクスと笑った。





恥ずかしいのか寒いのか、そっぽを向いてる破天荒さんの耳は真っ赤だった。









「―……」





「…ああ、そっか。」





「…?;何だよ嬢ちゃん」










心地良いから引き寄せられて、

温かいからそれを求めて、







きっと、









それが好きってこと。











「ー…あったかいですね」

「…ああ。」






だから理由なんてないの。









「今日の夕ご飯はシチューに決定!」

「?何だよ急に」


「ふふふ、あったかくていいじゃないですか」

「まァな」









そんなものなの、
恋なんて









*fin*
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