NOVEL
□moment
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「人はね、誰かを好きになろうと思って、好きになる訳じゃないんですよ」
光を背にして嬢ちゃんが言った。
いつのことだっただろうか。
逆光が眩しくて、嬢ちゃんがどんな顔してたかは分からなかった。
俺がビュティに初めて出会った時。
運命だと告げる鐘の音も鳴らなけりゃあ、胸の高鳴りだって無かった。
思ったことは、未だ年端もゆかない少女が、何故こんな危険な旅に同行しているのかとかの幾多の疑問と、ただただ外見はまるで人形の様に可愛らしいという印象だった。
「夕食の買い物に行ってくるね。皆はそれまでにちゃんとテント組み立ててね」
『はぁ〜い』
時間を共有するうちに、少女ではあるが、しっかりとした性格なんだということを知った。
「ビュティ、1人で大丈夫か?」
「ボーボボ、大丈夫だよ。魚雷さんにも悪いし」
いつもビュティの買い出しに付き合ってるソフトクリーム野郎は、変な魚に捕まっていた。
「だがもうじき暗くなるしなぁ…。―…おい、破天荒。悪いがビュティの買い出しに付き合ってくれ」
「えっ‥!?いいよボーボボ!私1人で大丈夫だし‥っ破天荒さんにも悪いよっ…」
「買い出し?」
「ああ、本当なら俺が付いて行きたい所だが、テント作りがある。破天荒、さっきから何もしてねぇんだから、そのぐらいしろ」
ビュティが断っているのを無視して、ボーボボは俺を指名する。
俺は別に買い出しぐらいどーってことなかったが、ビュティは多分俺が苦手だろう。
「………………」
「ほら、早くしろ。日が暮れちまう」
「―…わーったよ」
しょうがなく返事をすると、俺はスタスタと歩いてビュティの買い物カゴを奪った。
「しゃーねぇから行くぞ」
「あ…っハイ!」
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