NOVEL
□moment
3ページ/7ページ
買い物は慣れた様にビュティが行い、俺はその荷物を持った。
「大丈夫ですか?私、ちょっと持ちます?」
「いいって。大したもんじゃねぇよ」
日々鍛錬を積む俺にとっては、本当にどーってことない重さだったし、第一そんな細っせぇ腕に物を持たせるなんて事は、間違っても出来ねぇ。
「はぁ、またこの山道を帰んのかよ」
「確かにちょっと疲れますね」
俺はそうは言ってみたが、実際そこまで山道を歩く事は憂鬱じゃなかった。
…きっとビュティと居るのが心地よくなっていたからだ。
その日を境に、おやびんと戦いだけしか見えなかった俺の世界に、嬢ちゃんが入ってきたんだ。
少しずつ、少女を意識する気持ちが強まってきている事を、俺自身分かってはいたが、何をするでもなくこの気持ちをただ隠した。
「破天荒さん」
「―…………」
「起きて下さい、夕ご飯出来ましたよ。今日はバーベキューですよ」
「……ん……」
いつの間にか俺は草むらで眠っていた。
ビュティがかかんで俺を覗き込む。桃色の髪と大きなピアスが小さく揺れた。
「ん〜……」
「ふふふ、気持ち良さそうに眠ってましたね」
「…そうか?」
嬢ちゃんの夢をみていたんだ、と、寝ぼけ半分の俺はうっかり言いそうになったが、直ぐ目が覚めて口を噤んだ。
俺は気だるい体を起こすと、ビュティの大きな青い瞳がくりくりと動いた。
「葉っぱついてますよ」
「ん?」
座っている俺に対し、立っているビュティには俺の頭は余裕の距離。
俺の金髪に優しく触れ、パラパラと葉っぱが落ちる。
「………サンキュ」
「ハイ!―早く来てくださいね、皆待ちくたびれて食べちゃいますよ」
それだけ言うと、ビュティは足早に俺の元を離れ、賑やかな輪の中へと戻った
俺も腰を上げ、同じ輪へと歩む。
…緩んだ口元をきつく締め直しながら。
―好きになる予定じゃ、無かったんだけどな…
<