NOVEL
□愛さない
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「……ねぇ、言ってよ」
「………………」
“愛してる”
少女の目からはひとしずくの涙が零れる。
「やっぱり嫌…。言葉で言ってくれなきゃ…分からない…」
「…っ……なんでだ…」
なんでだ
何故分からない
俺の愛が
言葉にしなきゃ分からねぇ程度の想いなのかよ
“愛してる”
込み上げる感情。
抑えきれない熱情。
“愛してる”
その一言を作り出す、
俺の身体。
血が沸騰してる。全神経細胞が麻痺してしまったかの様に、俺の中では“愛してる”の一言だけが、喉元まで込み上げているのに。
溢れ出してしまいそうなのに。
俺は、その言葉を飲み込む。
喉が焦げ付いた様な気がした。
「OVERさん…大っ嫌いッ…大っ嫌いッ……」
俺の胸板を叩く少女を、力一杯抱き締めた。
「ッ…………!」
壊れたって構わねぇ。
「ふッ……ッ……!」
乱暴に唇を重ねる。
激しく激しく求める。
そして激しく激しく愛を吐き出す様に。
“愛してる”
“愛してる”
“愛してる”
俺は唇を離す。
キラリと糸が引き、荒い呼吸を整える。
少女は俺にしがみつく。
「―…愛さない…私…OVERさんなんか愛してないッ……OVERさんなんか…キライよ……」
「……ああ、それでいい。…俺も…愛さない…」
もどかしい。
もどかしい。
あとどれ程、こんな薄っぺらい嘘の下で、愛を確かめ合わなきゃならないのか。
俺の身体は、こんなにも少女を欲しているのに。
「…………抱いて…」
「っつ……冗談言うな」
「冗談だよ…」
俺は、少女を抱けない。
抱いてしまっては、きっとこの愛を全てぶつけて、コントロールがきかず、“愛してる”と吐いてしまう。
最大の禁句を。
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