NOVEL
□the Vampire moon of Princess
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俺の調子がおかしい。
「綺麗な金髪だね」
「あ?」
少女は笑顔を崩さずに、ちょいちょい、と俺の髪を指した。
「綺麗な金髪。お月様みたいだよ」
「……」
やっぱおかしい。
普段の俺なら、こんな人間の女、直ぐにでも吸い尽くしまうのに。
「…お前…」
「ん?」
「なんでこんな時間に‥女が1人でこんなとこにいんだよ」
そしたら少女は、きょとんとした顔で俺を見た。
「だから満月を…」
「っ…ちげぇーよ!なんでお前みてぇなか弱い女が、こんな時間にこんな暗いとこにいるのかつってんだよ!危ねぇだろ!」
「……ああ、そっか」
何言ってんだ 俺
こんなん俺じゃねぇ!
俺ァ襲う側の獣だぜ?!
吸血鬼だぜ?!
なのにこんな…
「ありがとう、心配してくれて」
「っ…別に」
女はまた笑った。
さっきよりも嬉しそうに。
「ねぇ?」
「……あんだよ」
「名前、教えて?」
「あ?ー…あ、…ポルストロイ」
「ポルストロイさん?ふふふ、わかった。」
「………お前の名前は?」
「私?私はー…」
少女は口を噤んだ。
笑ってはいたが、どこか少し違うと思った。
「そのうちー…分かると思うよ」
「ああ?」
少女の真っ白い肌が、月明かりで青白かった。
「…お前…、俺が怖くねぇのか?」
「え…?」
「俺が戦ってるとこを見たんだろ。ー…ビビらねーのかよ」
「ポルストロイさん…」
女は俺を見つめた。
でかくてクリクリした目は、胸を刺されるような説得力があった。
笑顔もその瞳も、いや全てが、俺が初めて遭遇した特別な存在だった。
「ー…怖いよ。戦っているときは。…でも今は、違うから怖くない」
耳元で風が抜けた。
「…んなこと言ってると、襲われんぞ」
「守ってくれる優しい仲間がいるの」
「でも今はいねー」
「え…、ポルストロイさ…」
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