NOVEL
□Every little thing.
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「人を守れる強さがある所、」
破天荒さんは只私を見つめた。
その目の色素の薄さが不思議で好きだった。
彼の肌は夏には日焼けオイルを塗るので、綺麗な茶色だった。たから瞳が余計に映える気がした。
「あと、考える時にこめかみを押さえる癖も好き」
「え。うそ。」
「ほ〜んと。いつもやってるよ」
そうか、と言って彼は薄ベージュのクッションを左腕に閉じ込めた。
私はたくさん氷の入ったレモンティーを口に運んだ。
水滴がポタポタと落ちたので破天荒さんはお絞りをくれた。
「クーラー強めていい?」
「ああ。…嬢ちゃん脂肪ねぇくせに暑がりだな」
「関係ないじゃない;」
2回程ボタンを押したら、クーラーの機械音がさっきよりも乱暴になった気がした。
「…んで?」
「なに?」
「俺の好きなとこ。」
「ああ〜、もういいの。私、破天荒さんの全部が好きだから」
私がさらりとそう言ったら、彼はキョトンとした。
嬉しそうな顔をすると思ったので、何だか残念。
「―…俺、変わったぜ。」
「…何が?」
「前と比べて。…あ、前っつーのは、嬢ちゃん達と出会う前な」
破天荒さんはそう言って落ちていた私の雑誌を拾った。
幾つか付箋を貼っているのを見て、ちょっとだけ微笑った。
「…それって、良い方向に変わったってこと?」
「…だな。」
「―…破天荒さん自身は、それを嬉しく思ってるの?」
「…最初は正直ウザかったぜ。前の俺ではやったことを、今の俺はしねーんだ。そりゃあモヤモヤした。」
破天荒さんは左手の中指関節をこめかみに押し付けた。
「…でも、それは嬢ちゃんと出会ってからで…。前は分からなかった嬢ちゃんの考えることも少し分かるようになった。それはすげー嬉しかった」
「―……」
肯定とは優しさだ。
人間にはポジティブとネガティブがある。
私には、只単純に前向きやその逆ばかりでは無く、ポジティブには動物的に突き進む強さがあると思った。
故にネガティブにはどこまでも考え込む癖があると思った。
彼は前者だった。
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