NOVEL

□Loseo
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「私は3世さんのこと好きだから、ずっと一緒にいる」





ビュティは照れもせずにそう言うと、氷漬けのグレープフルーツジュースを飲んだ。

そして俺と目が合うと、ストローを離してにこりと微笑んだ。




「―……」





心臓の奥が熱い。


俺は指先でビュティの顎を持ち上げると、唇を重ねた。





「………」


「―……お前が大事だ…、何よりも…」







さまよった小さな手を握ると、ビュティは満たされた様に目を伏せた。

そして俺の胸に凭れた。




「3世さんがこんな風に少しでも物を大事にしたら、きっと無くし物だってしなくなるよ」


「…そうか?」


「きっとそうだよ。物は使うヒトによって寿命が変わるから」






「…お前から貰ったものなら、全て取ってある」


「え?」



「…ちょっと。待て。」




俺は名残惜しげにビュティを胸から離すと、壁に吊されていた絵画を外した。

「…?」




そして絵画によって隠れていた金庫を、数字を合わせ開いた。

重厚な扉を開くと、白い長方形の箱を取り出した。




「…それ…、」


「―…お前から貰ったものだ」




俺はそれだけ言うと、机に置いた箱を丁寧に触れ、ゆっくりと蓋を開けた。





「―……」



中には、ピンク色のしおり、レースのハンカチ、そして手作りのブレスレットが入っていた。


「持っててくれてたんだ…」


「当たり前だ、お前からの物を、無くす訳あるまい」





ハンカチは、俺とビュティが初めてふたりきりで出会った時に、ビュティが怪我をした俺に差し出したもの。

しおりは、ビュティが度々城にくる様になり、互いに読書好きだと分かった時に、ビュティがくれたもの。


ブレスレットは、手先が器用なビュティが、俺の誕生日にくれたもの。











「…ふふ、何だか恥ずかしいな」

「何故だ。お前がやった物だぞ」


「だから恥ずかしいのよ」




小さな手は俺の服の裾を握った。

頭を撫でてやると、くしゃっとした笑みがこぼれた。









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