NOVEL
□★未完成な僕らの二人旅
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「…うん。…でも、」
「…でも?」
背負ったリュックを背負い直して、俺は彼女の言葉を復唱した。
「でも…、私今、すごく幸せ。へっくんとこうして旅が出来て…」
「ビュティ…」
「確かに二人きりは寂しいけど…、二人だとドキドキするの。旅のドキドキじゃないよ?…へっくんと二人きりで居れるから…」
「っ―…!」
可愛い可愛い可愛い―!!!!!!なんだその可愛さは―っ!!!!!!!
恥ずかしそうに俯いたビュティの長い睫は影を作っていて、ぷくりとした薔薇色の唇に俺は思いがけず吸い込まれた。
彼女にキスをした。
「……」
「―…へっくん…、」
「ごめ…、何か我慢出来なくて…」
お互い赤面して、その場の空気が何だかやるせない感じになった。
俺はそれを振り切る様に太陽を仰ぐと、ビュティと手を繋ぎ直した。
「―…さ、先急ごう、か」
「……」
「うんっ…!」
* * * * * *
「っ…きゃあ!!」
「ビュティ!!」
夕闇が近付くとあわや敵が増えて来た。
ビュティの可愛さに魅せられる変態だってたくさん出る。
っ…忌々しい!
「オナラ真拳奥義!皐月!!」
「ぎゃあああ」
「―……」
「ありがとうへっくん」
「怪我ない?」
「うん、大丈夫」
気付けば月が薄ぼんやりとした寂光を放ち、空に浮かび上がっている。
そろそろ夜が近いらしい。
「―…暗くなってきたね、今日はこの辺にテント張ろうか」
「ん、―…くしゅん!」
ビュティはくしゃみと同時に、そのか細い身体を小動物の様に震わせた。
…確かに夜は冷え込む。
「大丈夫?」
俺はそう言うと、羽織っていたシャツをビュティの肩に掛けた。
「あっ…いいよ、これじゃあへっくんが…っ」
「俺は平気だから、着てて」
微笑んでその桜色を撫でた。
「……ありがとう」
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