一面、灰色の空から容赦なく降り続く雨は、わたしをただ憂鬱にさせた。





故郷を思い出した。















降り続く憂鬱に、そろそろエンドロールを


*hijikata×kagura*








つまらない。
つまらない。

わたしに背を向けて、さっきからずっと机の上の書類にばかり視線を落とす男に、わたしの退屈と苛立ちは拍車をかけた。


庭に咲く紫陽花にさえイライラした。




「…ねぇ。」


「……あー?」


「ねぇってば。」


「だから…何だよ。」



こっちを見もしない。

土方十四郎はワーカーホリックで死ねばいい。





「……………。」


「……呼んでおいて黙るな。」


「……トーシロー…、」


やっとこっちを向いたトシは、わたしの顔を見た途端、吸っていた煙草を灰皿において、上着を脱いだ。




ため息混じりに吐き出された煙は、半分程開けられた窓から逃げていく。

それとは逆に、わたしはトシに吸い込まれて、その身体を手に入れた。




「……仕事、残ってっから、今だけだぞ。」


「…神楽様相手にそんな要求するなんて、何様アル。」


「あー…わーったよ。」



てっきり、『お前が何様だ』とか言うと思ったのに。

その胸の中から見上げたトシの顔は、ひどく優しかった。





わたしはなんだか泣きたくなった。





女っていうのは感傷深くてキモチワルイ。








「……雨、むかつくネ。」


「…ま、こうも毎日雨続きじゃ気が滅入るな。」


「故郷みたいで嫌アル。……お日様が恋しいヨ。」




夜兎のくせになにを。

自虐的な意味ではないけれど、吐いた言葉の似合わなさに恥ずかしくなってたら、温かな手がわたしの頭を撫でた。



「…違いねぇ。」





柔らかく、ただトシは肯定した。



わたしの不備を否定しないトシは、わたしを受け入れて、愛してるんだと自惚れさせる。


そんなトシがすきだと思った。






「…あー…、やっぱ、仕事になんねぇ。」


「そう言いながら、わたしのパンツを剥ぐこの手はなにアルか。」





空が曇る度、雨が降る度、わたしを憂鬱にする日常は、もしかしたら終わるかもしれないなんて、煙草臭い身体の中で思った。




『すきだ』、『あいしてる』、降ってくる言葉の雨に、それは少しずつ確信に変わっていく。













「……雨、上がったら、パトロールがてら散歩いくか。」





「………うん!」








もうすぐ、からりと晴れた、夏がくる。













*fin*




飲酒森永の突発土神。
どうなんだろ…。


雨って憂鬱ですものね。








[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ