NL小説
□さくら
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「黒崎くーん!」
大きく手を振ってこっちに駆け寄ってくるのは今俺が見上げていた桜のように満開の笑顔の井上。
ていうか井上、足元見ねぇと・・・・
「浅野くん達が呼んで・・・・うわぁ!」
「危ねぇっ!」
予想道理、何もないところで転びそうになった井上を間一髪で支えた。
「えへへへへ・・・・ありがとう」
照れ笑いを浮かべる井上に俺はデコピンを一発お見舞いしてやった。
「気をつけろよ。ったく、かわんねぇな井上は」
「黒崎くんもね!」
「そうかぁ?」
「そうだよ。眉間のしわとか眉間のしわとか眉間のしわとか」
「眉間のしわしかねぇのか俺は!!」
「おおっ!ナイスツッコミですなぁ〜」
「一応褒められているんだろうけど嬉しくねぇ」
「え〜?」
いつもの些細な会話。こんな会話さえもう出来なくなるのかと思うと複雑な気持ちになる。
「わぁ〜、桜満開だぁ!今日は良い天気だし、卒業式にピッタリだね!」
さっきまで俺が見上げていた桜を見て井上が感激の声を上げた。
「・・・・そうだな」
そう、今日は俺たちの高校の卒業式。三年間過ごしたこの高校を去る日だ。