†ラグナロク神界編†

□†chapter.2†
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「人は長生きすることを望み、しかも老齢を恐れる。人は生命を愛し、死を避けるのである」− ラ・ブリュイエール(フランスの作家)

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「お前はさっきから何をしているんだ」
 先程からクリスは空中をずっと歩いていた。そんな様子をスクルドは最初は、呆れながら見ていたのだが、流石にそれを1時間以上もされると苛々してきてしまい、先程の質問となった。
「なんか死んだんだなって改めて実感した。空だってこう浮いてるし」
 ははと面白げに笑って答えると、スクルドは、軽く鼻を鳴らした。お前は馬鹿かと言いかけたが、それを止めた。じっとこちらを黙ってみてくるスクルドにその視線に困った様に笑い、視線をあちことに泳がせた。視界には、銀髪の少女の姿がピンクの傘をさし、レースのついたワンピースを着ている姿が視えた。その紫の双眸が嫌な感じがした。謎の魔方陣・・頭の中に直接、響く声。
‐若く健康的なままでいつづけたい。
‐その望み僕が叶えてあげる★
‐あの女がいる限り、私は!
‐マリィ
‐愛しております
‐若さと美しさを保ちたい・・死にたくない!
 場所はゲルマニスク王国の首都、ベルリンだ。
「見つけたのか」
「あなたはヴァルハラに行って、はやく戦力になりなさい」
 不満を言おうとするクリスだが、スクルドの言葉は当たっており何も反論が出来なかった。だが、それより何よりも無言の威圧感が恐ろしくて何も言えなかった。クリスはひきつり笑いをして、黙って頷いて青白い光の羽根を背中から出し、いなくなった。それを確認するとスクルドは、ゲルマニスク王国に向かった。あの少女がなんなのかを考えると嫌な予感がした。

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 何かが壊れる音がした。それは、自分では止められない。全てを破壊したい衝動。そのまま剣を振り落とし敵の頭を真っ二つにした。
「荒れてるな、ロキ」
 大剣を担ぎながら、軽口を叩くのは端正な顔立ちをした青年だ。
「血が臭うし、巨人族は弱すぎていらっとな」
「それは、言えてるなぁ」
 レモンイエローについた赤い血をいじり、自分の頬についた返り血を、白い手でなぞり口に運びゆっくりと舐め取った。だけど、血は香ばしいぞと、シャツにこびりついた血をくんくんと鼻を鳴らし嗅いでいる姿はまるで、犬の様だとロキは思った。黒い双眸は、左右の違う色のした双眸を見つめ笑った。
「お前は父親に捨てられた事が悲しいんだな」
「は?」
「だから今凄く悲しい。だから、イラついてる」
 ロキは目を丸くして端正な男を見た。暴走した力で襲ってくる化け物を青年は、後ろを振り向かずに、大剣を構え正確に心臓を突き刺した。巨人族は、そのまま口から溢れるほどの血を吐き出し、青年を真っ赤にさせて、倒れると、地面が揺れた。
「ミッドガルドは今頃、大地震が起こってたりしてな、なぁ?」
 肩を揺らして笑う青年は全身に返り血で白い肌が赤に染まられていた。白いシャツも、たっぷりと血を啜りずしりと重たくなった。身体に張り付いていた。
「パンツまで血でぐしょぐしょっていうのは流石に最悪だ」
「そうか・・」
 戸惑った様に答えるロキに青年はまた、笑った姿をみて。ロキは、肩をすくめながら、
「アレス・・普通ならお前と知り合った事に後悔とか恐いとか感じるんだろうな。だが、俺は結構よかったと思えてきた」
「なんだ、それ?」
 アレスはロキの言葉に腹をおさえて笑った。
「まぁ、最高の賛辞と受け取っとくぞ」
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