†ラグナロク神界編†

□†chapter.3†
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「われわれが死によって失うものは時間のわずかな一部、現在の一瞬のみ」−アウレリウス 「自省日記」

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『私はつねにその時代の終わりこそ、見続けてきた。だが、始まりは見たことなどない』
 ウェーブがかった黄金の髪に、緑の双眸の女が時代の終わり、新しい時代を迎え、歓喜の声をあげる地上の声を上空から無機質な瞳で見下ろしていた。ひとつの身体に3つの精神が混在している存在。精神が切り替わるたびに、姿・形も変わる。先程まで、ウェーブがかった、女から髪の短い金髪の女に切り替わった。
『私達、だよ』
 耳より少し長いサイドの髪をいじりながら楽しげに見下ろしながら、告げた。
『私達で人の寿命を決定して、未来を決めていいのだろうか』
 金の髪を後ろにまとめてしばった女が、多くの死者を出した、墓石やそこの地べたで横たわっている遺体を苦々しげに目を向ける。
『何を今更。それが私達の役目だろう』

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 そこでスクルドは目が覚めた。自分達がまだ、ひとつの身体に存在していた時の懐かしい夢だった。なぜクラリスである記憶が曖昧に思えるのだろうか。日に日に、薄れていく記憶。不安になり頭を抱える。金の髪をした少女は存在している。なのに、急に不安になる。本当に存在をしていたのだろうか、と。
銀の髪の小さな少女が脳裏をよぎった。
「・・ボダの気配・・なぜ・・」
 そう疑問に思った時に、急に声が聞こえた。
−命はどこへ行くの?それを常に探していたわ
−死神が!私の魂を求めるか!
 死者の声が聞こえ、場所までも特定できた。そこには、懐かしさを漂わせる瞳が気配があった気がした。

「ふふふ♪駄目だよ、まだ全てを知っちゃ★」
 ボダは、ピンクのレースのついた傘をさしながら上空を歩いていた。
「僕の気配で今の不安は忘れさせてあげちゃうよ★」
 僕は優しいと鼻歌混じりで呟くとすっと、景色と溶け合う様に消えた。
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