†ラグナロク転生編†

□ラグナロク
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不倶戴天

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‐我等一族の恨み、お前らを全て焼き払い、呪い殺してやるっ!
そんな男は物凄い形相で自分の後頭部を踏み付けている人物を睨み付けた。そんな目にも平然とした顔で受け止め、嬉しそうに青い双眸を細めて笑っていた。
‐それがお望みならな・・やってみせろよ。そして、俺の顔を踏みにじってみせれよ。
 頬や服全身をべっとりと鮮血で染めあげ、真っ赤に染まった金の髪を邪魔臭そうに払いながら、青い双眸は凶暴に輝き男は喉を鳴らして笑う。恨みと怒りで爛々と燃えて射抜いてくる男の眼は余計に嗜虐心が煽られるだけ。男の後頭部を余計に踏みにじり、手にしている斧を振り上げそれを一気に振り落とした。首は綺麗に切り落とされ、動かなくなった。その姿をつまらなそうに見下ろしながら、斧をその辺に投げ捨てた。そこも死体の山ばかり。端正な顔をした男はふと視線を感じとり視線がする方へと笑って向けてきた。
「夢は視れたか、俺の可愛いお姫様?」
 端正な顔を歪ませて笑っているのに美しく感じる。だが、夢の中なのに気づく男に驚きを隠せなかった。目醒めなければと思い、意識を遮断した。
「・・・」
 ここにかえってこれたのだろうか。シーツの感触が肌に感じとれる。手を握ったり離したりと確認をして、ゆっくりと青緑の瞳を開くと朝陽が眩しくまた、目を瞑り今度はゆっくりと目を開き2、3度瞬きをした。それはここが、現実かどうかを確かめるように…ふと自分の首に触れれば、首は繋がっている。当然だ。夢の中で殺されたのはシンクロしていた男であり、自分ではない。だが、切られた様なひやりとした感触みたいなものは残っており不愉快だった。それを忘れるかの様に思わず眉間に皺を寄せてしまったものを、溜め息ひとつ軽く吐き冷静さを取り戻した。額からもうっすらと汗が滲んでおり、気持ちが悪いと思いながら、起き上がり洗面所に向かい歩きだした。そのままシャワーを浴びようと、ノズルを回せば熱いお湯が出てきた。なんだって今更になってあんな夢をと思いながら、頭を洗い考えたがそんな事を考えても仕方がないと頭を軽く振りシャワーを浴びるのを止めて出てきた。ポタポタと髪から落ち、床に水滴が落ち染みとなるのも気にせずに、そこら辺に乱雑に床に散らかっているタオルを床から拾いあげ、頭を雑に拭いた。けたたましく首にかけている銀のメダイから音が鳴り響くも美女は、表情ひとつ変えずにそのメダイを口元まで近付けた。
《あー、やっと出てくれたァ。なんど連絡しても全然出てくれないから心配してたんですよぉ??サクヤちゃーん》
 のんびりと間延びした幼女の声がメダイの向こうから聞こえ、サクヤは無言でそこら辺に散らばっている下着と服を掻き集め着替えに取り掛かる。私の質問は無視ですかぁ?という、間抜けな声には一切返事もしなかった。だが、あまりにしつこく返事がないとか煩く感じたサクヤは下着を身につけてから、
「着替えてから向かうわ。だから、その煩い口を閉じなさい」
 触れれば切れそうな冷たい声音で答えると、さすがの相手も恐かったのか謝りながら通信を切った。

†††††††††

 サクヤはレースのついた藍色のワンピースにローライズの姿で出てくると、その冷たくも美しい容貌に皆が思わず立ち止まり振り向いた。そんな視線にも表情ひとつ動かさず、今から会う女を探すと、フロントの赤くふかふかしているソファーに座って足をぶらぶらさせながら待っていた。薄茶の髪を後ろにまとめあげた姿をした女の方に向かい、歩き始めたか気配も完全に断っている美女に気が付くはずもなく、小柄な女は美女を黙って待っていた。
「おはよう」
「きゃっ、サクヤちゃ〜ん。今はこんにちはだよぉ」
 驚いた様に緑の双眸を丸くした童顔な女はすぐに破顔した表情でサクヤを見上げた。サクヤは長身で体型も、ほっそりとしてはいるが肉付きはがっちりとしてしなやかだ。
「なんだか相変わらずモデル体型で羨ましいです〜」
 そんな自分とは正反対な姿と見比べてがっかりというもののたいした興味もないサクヤは特に返事はしなかった。
「身長もあっていいですねぇ」
 口を尖らせて不満そうに言う姿に軽く溜め息を吐いた。
「ララァ・・なぜ私を呼んだの」

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−自分がどんなひどいことを行うかわかっていても、怒りは抑えられない。人間に最大の禍をもたらすのが怒りである

〜エウリピデス〜


 今日も化け物退治に乗り出す3人の若者たち。
「おい、ラズリー!あそこの幽霊屋敷にある宝を取ったら、女と結ばれるんだってよ!」
 ラズリーという少年は、気弱で好きな少女がいても、緊張して話す事さえできない。そんな少年を心配と同時にからかい半分でここに連れてきた。
「で、でも・・・グラン、ぼ、僕」
「なぁラズリー、マリアは勇気のある奴が好きなんだ、ここで男を見せて惚れさせよう、な?」
「う、うん」
 グランの言葉に渋々という感じで頷いた。
「ちょっとー早く行きましょうよ!」
 マリアという少女は、急かす様に手招きをするとグランは苦笑し、ラズリーはおどおどしながら小さく頷いた。
 薄暗い森の中を歩くと何もない所から、何かが走る音が聞こえてきた。マリアは小さな悲鳴をあげ、ラズリーの背中に抱きついた。それに困った様な落ち着かなくそわそわしてしまい、思わずグランを見ると背中をさすって安心させろと小さく告げた。
「また、私の食事になる為に現れたのか?」
「えっ?」
「きゃああああ!」
「マリア!」

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