*二次創作小説*

□ハレルヤ
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 僕たちにはあまりに甘い一時で苦々しいものはないはずなのに時折、僕たちの思いは上がったり下がったりする。
 僕は音楽なんて、そんなに好きじゃないんだよ。なのに君の歌うものはなんでか好き。名前も知らないけど、僕は君の青みがかった黒髪をいじりながら黙って聞くのが好きだよ。

 僕たちは不埒な関係だけど、初めてじゃない気がすると言ったら、君の左右違う目が脅える様なそれでいて、泣き出しそうな顔をして微笑した。僕の心はちくちくと何かが刺さる様に痛い。僕を見なよ。君の視界には僕なんていないじゃないか。僕は君をうつしだしているのに君は、違う人間をうつしてる。

 僕は嫌な男です。こんなに僕を真っ直ぐと見て、はっきりと初めてじゃない気がすると言われると複雑なのです。思い出してほしいと切に願っていたのに、僕はとても恐い。
自分の気持ちに気付くのも認めるのも・・・ 僕はどうしたらいいのですか?アラウディ・・・僕は君を忘れられない。なのに、雲雀君の心が僕に向かってくる。

 僕は知っています。君が君になる前の君を。僕がひとりぼっちだと思っていた時に初めて君が僕の前に現れて、僕の心は救われたのだから。あの時の僕は争いは好きではなかった。平和を語る博愛主義。偽善者の様な存在。クフフフ、おかしいでしょう?今の僕では考えられない。
 ですが、虚しかったんです。勝っても負けても、そこは血に塗れた自分や情景しかなくて、死人に溢れかえっている・・・
 勝利の旗がたてられても失ったものが大きすぎて。どうしていいのか、解らなくて途方に暮れながらも戦火の中を勝って国家を歌い、喜び合う中を歩いて、歩いて、そうした中で君に出会ったのです。あの時程、僕は神に感謝した事はない。僕は喜びに泣いていました。だって、また逢えたから。

 雲雀君、君にこんなに必要とされる喜びに浸ってもいいのでしょうか?こんなにも命を奪い、人の愛を信じられなかった僕が、こんなにも君を求めている。求められている。幸せなのに、恐い。
 あぁ、今だけはどうか、どうか許して。
 僕は生きている人間と繋がりたい。共に過ごしたい。体温を感じていたい。君は僕のもの。そして僕は君のもの。頭の中からは讃美歌が流れている。神様も信仰心もなにひとつない僕なのに、乱れたシーツの下で君の頬に触れながら僕はこう呟くのです。
 Hallelujah、と。僕はあの時からずっと祈る様に口の中で囁いていたのですね。

 僕は愛なんて知らないから、愛し方も知らない。君が言った、神様がいても嫌われてる。天国の門は自分には開かれず、地獄の門が迎えいれてくれるでしょうってね。君が愛から教わったのは、どうしたら殺せるかって事だと。まるでなんでもないかの様に答えた君に僕もすんなりと受け入れられたよ。だって、僕もそうだからね。それが悲しいなんて思わない。そこに一本の光が射し込む訳でもないけれど。

 あるとすれば、

 そこにあるのは僕たちの冷たい残骸だけ。

-雲雀君・・・ひとつお願いをしてもいいですか?
-・・・何だい?
-僕にとっては、地上が天国です。楽園なんです。だって君がいるから・・・
-へぇ・・
-クフフ、もしも死んでしまったら臓器も全て漢方にしてもいいから食べてください。

-君を食べるのかい?
-えぇ、だって死んだら土に埋められて臓器はただ腐るだけ。死後の世界には持っていけないですから。それなら君に食べられて君の遺伝子の一部になるのが、究極で無償の愛でしょう?
-それが君の愛し方?
-それが親切心でしょう?僕はそれを示したかっただけなのかもしれません。
-親切心、ね。いいよ君のなら残さず綺麗に食べてあげるよ。だから、今はいつも歌ってる歌を聞かせてよ。骸・・・

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