*二次創作小説*
□生きる事。
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「骸って両親の事、覚えてるのか?」
「…はい?」
いきなり突拍子も無い事を聞かれ骸は思わず眉を顰め沢田綱吉の顔を見た。
「何ですか突然…」
少しキツイ様な物言いで尋ねるとツナは、少し怯えた様に眉を下げ焦った様に両手振り言い訳を始めた。
「あー、いや‥何か聞いた事なかったし、何となくどんな人なのかなぁって思って」
君には関係のない事でしょう?と言いかけ、寸前で飲み込んだ。
「知りません」
短く溜め息を吐き答えるとツナは何か悪い事を聞いてしまった様に動揺していた。自分から聞いておいて…と、骸は少しその反応に苛立ったが、落ち着かせるように目を軽くつむりまた、溜め息を吐いた。
「本当ごめんっ!」
「…君、僕は幼少期をエストラーネオファミリーの人体実験として育てられたんですよ?」
両親の事なんて覚えているはずがない。だが、知りたいと思った事もなかった。
「本当、ごめん」
「別に気にしてなんていませんよ?興味ありませんから」
その言葉にツナは驚き目を見開いた。その様子に逆に骸は戸惑った。なぜ、そんな表情をするのか解らないからだ。
「なんで?」
「は?親の記憶なんてありませんから、どんな人間でどんな風に生きてどこで出会ったかなんて興味も起こりませんね」
だいたい知った所でどうとなる訳でもないだろう。
「知った所で何かが変わるとも思えませんし、それに親の顔も何も知らないから何の感慨も起こらないのでしょうね」
本当に関心なんてなかった。ただ、自分は女の胎内で育ち、生まれたとしか思っていない。ここに自分が存在するという事はつまりはそういう事だろう程度の認識。だからこそ、目の前の男がこんな気まずそうな表情をする意味が解らなかった。
「じゃ、じゃあ、生きている間に逢いたいとかも思ってないのか?」
「クフフフ…沢田綱吉、僕は生きる事に執着なんてしてませんよ。未練もない」
だから、逢いたいとも思わなかった。一緒にいた記憶がないのだから…親がいたんだ、その程度な認識。
「そんな事言うなよ‥未練なんてないとか…思うなよ」
悲しげに言うツナの言葉に骸はオッドアイの瞳を軽く見開いた。
「‥沢田綱吉?」
「そんな事言ったらまるで、どっかいっちゃいそうだよ」
必死な形相で骸の腕を掴む、その両手は力強く腕が少し痛かった。掴んでいる両手は白くなっている。
「僕は六道輪廻を廻って記憶を持っている‥前の記憶もある…だが、それは現在の僕とは関係ない…ですが……」
そっと掴まれた両手に自分の両手を重ね握る。
「記憶があると‥僕自身が余りに長く生きている錯覚を覚える…十分生きた感覚……君には解らないでしょう?」
ゆっくりと手を引き離し骸は微笑んだ。
「ですが、君が僕と同じ事を言ったら多分、たかが14年しか生きていない癖に何を言ってるんですかと言ってやりますけどね?」
「じゃあ、お前は15年しかまだ生きてないだろって言ってやるよ」
クスクスと笑い骸は立ち上がった。その姿が段々と冷たくなっていくのが解る。
「では、もう少し生きたいと思っておきましょうかねぇ。君の10年後を見てみたいですから、ね?」
そう楽しげに独特な笑い方をしながら、骸は消えた。その代わりにクロームの寝顔に戻っていくのを確認すると、ツナはクロームをしばらく見ながら、くすりと笑う。
「俺も10年後のお前を見たいよ」
そっと小さく呟いた。