二次創作・長編

□穏やかな日々は僕達を殺す
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 白蘭があっさりと死んだ。その日を望んでいた筈なのに、現実になって見てしまえばなぜだか、心に小さな小さな穴が空いてしまった。骸は跡形も無く消失してしまった場所を赤と青のオッドアイでじっと無感動に見つめていた。
 白銀の髪が白い肌がアメジストの双眸を無邪気に細めて笑う姿が思い出されてしまう。

「クフフ退屈ですねぇ」

 平和でありきたりな日常が戻る。それは、沢田綱吉たちにとっては幸せな世界。皆が楽しそうに会話をして笑って、悩んで相談して恋をして、学校に行って勉強をして、帰る場所へ帰り家族にただいまを言う世界。そんなあたたかな日常。そして朝をむかえておはようといい、帰る時はまたね、そして夜はおやすみ。そんな変りない退屈極まりない日常。

 だがその日常は自分には分からないし、幸せと感じた事がない。そんなありきたりな繰り返しに幸せなんて感じたことはない。いや、自分はそんな経験なんてあまりない。黒曜にいた時はそうだったのだろうか・・。だが自分の日常は、大人たちの玩具で実験体で殺戮の繰り返し。それが日常だ。無感動に骸は跡形もなく死んだ白蘭がいたであろう場所を見つめる。沢田綱吉もこれでマフィアに一歩仲間入り、そんなどうでもいい事を思うと笑えてきた。
 あぁ、この世は退屈だ。いっそ自分の物にするくらいなら壊してしまおう。なんだか、寂しい、虚しい、泣いてしまえたら楽になれるのに。つまらなくなってしまった。

「どうして死んでしまったのです?」

 渇いた笑いを零しながら骸は小さく呟いた。つまらない。会う事もきっとない。過去のあなたを探しても、それは自分の知っているあなたではない。会っても意味がない。
違う形でもう一度会えるとしても、きっと自分達の関係は変わっていくのだろうか。

「クハッ!それはそれで、楽しそうだ」

 彼は死んでしまった。それが事実。変えるなら過去しかない。過去でやれるだけの事をしよう。だが、あなたは気付くだろうか。物言わぬ遺体を骸は愛おし気に見つめ、微笑んだ。

「死んで良かったですね。もう何かに退屈せずにすみます、もう未練がましく何かを求める欲にかられる事なんてない。生き続ける事よりも、きっと…」

 楽なのだろうか。人それぞれ、思い方は違うからなんとも言えない。だけど生きている自分は退屈。この世界はつまらない。同じ日常ばかりの繰り返し。どうして、死んでしまったのか。こんな簡単に。

「こんな穏やかな日々は、僕には似合いませんね」

 あなたがいない。それはとてもつまらない。だから、もう一度始めよう。過去の自分があなたを見付けるだろう。それは予感だ。だから0から始めよう。それはきっと気の遠くなる作業。

「穏やかは敵です」

 あなたがいないとつまらない。退屈すぎて、頭がおかしくなる。心が弱って虚しさで蝕まれていく。だから、あなたに会いにいこう。過去の自分が見付けて、未来を変えてくれる様に。過去の自分は、この退屈極まりない生活をどう思うのだろうか。復讐者の牢獄が退屈なら外へ出て、彼を探してほしい。
 そうすれば退屈から逃れられるから。
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