basara

□さようならありがとう
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「ななし、ななし!!」

あぁ

何処かで愛しいあの人の声がする。

私の名前を呼んでいる。


「…ななし!死ぬな、死ぬな!」
「………三、成?」
「、ななし!」
「ごめ…あたし、失敗しちゃっ……」
「気にするな。戦は勝った」
「…良かっ、た」

関ヶ原で私達は秀吉を殺した家康を倒すため、東軍と戦った。

そして
私は家康に――敗れた。

後少しで勝てたのに。
そう思うと悔しさと切なさ、憎悪が込み上げてきた。

でも、体の痛みがそれを打ち消していく。
終いには何も考えられなくなるだろう。

―――三成の、ことも。

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。

こんなに好きな人を忘れたくない。

「…しっかりしろ。今止血している」

そう言って三成は布で出血が止まらない腹部の傷を抑えてくれる。
もう止まらないのがわかっているのに。

貴方は本当に優しい。

「………三成、」
「なんだ?」
「…もういい、もういいよ」
「……………」

でも三成は止血を止めない。
眉をひそめて止まらない血を見つめている。

「…もういいの、三成。…それより……」

そう言って力の入らない手を差し出す。
無言で、でも力強く握り返してくれる。

嗚呼、泣いてしまいそうだ。

三成は手を握ると、あの日の秀吉みたいに上半身を起こして、支えてくれた。

秀吉が死んだ
あの日みたいに。

でも、私は秀吉の様に三成より身長が高くないから三成を見上げる形になる。


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