basara

□二人ぼっち
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「…なんだよお前、気持ち悪」
「須藤だろ?」
「さっきぶつかっちゃった、汚い」

どこからか聞こえてくる声、私の心を容赦なく蝕む。

「汚い」

ズキ

「気持ち悪い」

ズキズキ

胸がどんどん締め付けられる。
苦しい。痛い。

私はただ、皆より少し髪色が薄いだけなのに。皆と同じ人間なのに。何故…。
茶色の髪なんて他にもいるのではないのだろうか。
どうして私だけこんな、

刹那、私の思考回路が衝撃音と共に止まった。……額が痛い。
足元に転がる石。投げられたみたいだ。痛みを堪えながら逃げる様に河原を歩く。

独りじゃすることもないのでとりあえず少し離れた川のほとりに座ってみる。

ぼんやり川を眺めていると、上から声が降ってきた。

「…もし、そこのお方」

その声はどこか懐かしくて、優しそうだった。

「…はい、」

振り向けば背後に若い男の人が立っていた。
歳は同じくらいだろうか、長い髪を一つに結っている。少し薄い髪色が赤い着物によく合っていた。

「…あの、お怪我を」

言われて自分が怪我をしていることを思い出す。

「…大丈夫ですよ、「そんなことござらん!直ぐに手当をせねば」……」

私の台詞なんて聞きもしないで彼は私の前にまわる。いじめられてできた傷を見られるなんて…みっともない。恥ずかしい。

頭の中でうんぬん考えているうちに手当は終わった。幸にも理由は聞かれなかった。

夕焼けを眺めながらしばらく彼と話す。
彼が侍であること。本当の自分自身を見てくれる人がいないこと。

彼もまた、独りぼっちだということ。
色々なことを話していくうちにつれ、彼がどんどん近くなってゆく気がした。



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