basara

□愛、哀、藍
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朦朧とした意識の中、微かに聞こえる声。
きっと彼のだろう。

ゆっくりと瞼を開けば、再び体に痛みが走り意識が覚醒してくる。

『…っ、ぅ、ぁぁぁ!』

ズキズキと体のあちこちが痛い。
下を見れば緋水でいっぱいだ。…きっと私のだろう。

「……ハァ、ハ……」

荒い息遣いが聞こえビクリと肩を震わす。

「…ななし……ななし……」

何度も上擦った声で私の名前を呼ぶ目の前の声の主を見れば、俯いていて目は見えないもののかなり辛そうだ。

形の良い眉を八の字に下げ、私に縋る様に腹部の傷に頬をすり合わせる。

……痛い。

私の緋が彼の頬を染めてゆく。

「……どうして……どうして…」

辛そうにボソリボソリと紡がれる言葉を何回聞いたことだろう。

カチャ、

視界の隅で彼が刀を持つのが見えた。

――やられる

『……ぅ、く、』

逃げようにも足が動かない。
彼に切られた腱が疼く。

床に組み敷かれたまま動けない私を尻目に、三成は私に覆いかぶさったまま鞘から刃を抜く。

ザシュッ

『―――!!』

声にならない叫び。
三成は顔だけ上げて私の顔を見ると嬉しそうに目を細め、そして行為に戻る。

鎖骨がズキズキする。

三成はもう用は無いかのように刀を放り投げ、新しい傷口に舌を這わす。

『んっ!』

くちゃ、ぬぷ

愛おしそうに、ゆっくりと、溢れ出す鮮血を舐めとっていく三成。

「……ななし…ななし…」
『…痛、い……三成、……』
「……ななし…貴様は私のものだ。もう誰にも渡さない。……家康にもだ」
『…ぁ、やあああああ!』

傷口に指を入れられてぐりぐりと掻き回される。

「ななし…ななし…、…家康の元になどいるな……私の、元に…」
『は、ぁ…ぅ』



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