basara
□愛、哀、藍
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朦朧とした意識のなか。
必死に脳を回転させ、やっと私は気付いた。
……これは、もしかしたら、本当にもしかしたら、彼なりの愛情表現なのではないのだろうか。
不器用な彼だからこそ。
愛することを知らぬ彼だからこそ、愛を伝えることを知らぬ彼だからこそ、ななしを、私をその身体で感じようとしているのではないだろうか。
『……三、成…』
…もしかしたら、彼は可哀相な人間なのではないか。
「……ななし、ななし、私を…認めてくれ……」
幸せそうに鎖骨を弄っていた彼はいつの間にか涙を流していた。
……意識が遠退く。
「ななし…私は貴様が…貴様のことが、」
彼が必死に自分の気持ちを伝えようとした
―――刹那
ずるり。
私の意識は藍色の世界に飲み込まれた。
愛、哀、藍
(もう何も聞こえない)
(やっと言えた…ななしに私の気持ちは伝わっただろうか)
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