basara
□飽食メランコリ
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誰もが寝静まった真っ暗闇の大阪城。
その庭。井戸に1人の少女がいた。
(……またやっちゃった)
汚れた手を洗い流しながら、少女は悔やんでいた。
また、彼との約束を破ったのだ。
飽食メランコリ
腹がはち切れるまで喰らい、後悔して吐き出す。
ななしは過食症である。
彼女は、「私がきちんと飯を喰う代わりに貴様は吐くな」と石田三成に言われていた。
三成は喰らうことを拒絶していた。それが以前から心配なのもあり、その話を承諾した。
だが、長く繰り返してきた過ちをいきなり正せと言うのも無理な話。ななしは皆がいないこの時間に、抑え切れぬ衝動を爆発させていた。
止めたいと思っても体がいうことを聞かないのだ。
『…はあ』
「またやったのか」
『!!……三、成…』
いつの間にか背後にいた三成に、ななしは軽くデジャヴを覚えつつぽそり呟いた。
『…いつから気付いてた』
「…」
彼女の問いが意外だったのか、三成は微かに目を見開いた。だが直ぐにまたいつもの鋭い目付きへ戻る。
「貴様が部屋に篭った頃からだ」
『……最初からかよ』
「何故そこまで喰らう事に執着する」
『…本能だよ。止めたくても…止められない』
俯くななしを横目に、三成は吐き捨てる様に言った。
「約束だ。今日は何も喰わん」
『っ、!…それは…』
「なんだ」
『…えと…』
約束は約束である。
破ってしまった以上、最初に言われた通り、三成はその日食事を取らない事になる。
破ったななしに反論出来る権利など有るはずもなく。
申し訳無さから、ただただ俯く事しか出来なかった。自分のせいで彼に大変なことをした。
頭の中を負の感情が駆け巡る。
そして
それを追う様にやって来る――暴食、衝動。
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