basara

□曖昧ヒューマニティ
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怖いんです

自分が自分でなくなるのが

貴女が遠ざかっていくのが



私は



人間になりたかった




曖昧ヒューマニティ


私が独り言の様にそう告げると、目の前の貴女は不思議そうな顔をするなりこう言った。


『何言ってるの?光秀は人間じゃない』


嗚呼、貴女はとても御優しい。こんな私を人間だとおっしゃる。


「そう思いますか?」
『うん。違うの?』
「……私は…貴女の様に、人間になりたい」
『……?』
「貴女を見ているといつも思います。貴女は美味しそうに、ものを食べる。楽しげに笑う。道端のちっぽけな花にさえ、感動を感じる。…私にはそれが無い」
『光、秀…?』
「貴女を見ていると、自分が不完全で、何かが足りない気がするんです。…そう、余りにも違いすぎる。そこで気が付いた。私は、人間ではないのかも、と」

そう言うと貴女は酷く悲しそうな顔をした。


『どうして、そんなこと言うの』
「どうして…とは」
『光秀は不完全なんかじゃないよ。私と同じ人間、足りないとこなんか無いもん』
「そう、思われますか」
『当たり前じゃない、馬鹿!』


馬鹿とは、また貴女はそんな口をきいて。

そう物思いに更けっていたら、胸に何かが伸し掛かってきた。


「…重いです」
『煩い』
「おや、また貴女はそんな言葉遣いを」

言い掛ければ胸にかかる重みが増した。


「…苦しいです」
『煩い』
「…ふふ」
『やっと笑った』
「?」
『笑うって云うのはね、人間にしか出来ないんだよ』

また貴女は…

『それにね』
「はい」
『こうやって!抱きしめ合えるのも人間だけなんだよ』
「ふふ…はいはい」
『ちょっ、馬鹿にしてるでしょ!頭撫でないでよっ』




嗚呼…貴女といると素敵な気分になります。
天にも昇る、とはこの事でしょうか。



ねぇ、ななし。

愛していますよ。



私は胸の上で暴れているものをそっと、強く抱きしめた。



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光秀にはカタカナのタイトルがしっくりくる気がします。三成は難し過ぎる漢字とか

 

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