basara

□優艶の君
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天下に手を掛けた豊臣にとって、今日は本当に久しぶりの休暇だ。

皆それぞれ自分の好きな事をして、休みを満喫していることだろう。


だがこの人は、いっこうに休んでくれなかった。


優艶の君


「いい加減休んで下さい!」
「…何を言うかと思ったら、またそれかい?」

こんな押し問答を続けて数十分。
もう聞き飽きたよ、とごねつつ未だ書物から目を離そうとしない天才軍師に、いい加減苛立ちを覚える。

こんなだからすぐ吐血するんだ。
何のために秀吉が兵に休暇を与えているのか。



「せめて、睡眠くらいちゃんと取ってもらわないと、」
「はぁ…少し、静かにしてくれないか」


今大切な所なんだ。そう言って、普段私には見せない、鋭い目つきに睨まれる。



あまり向けられたことの無いそれに、喉から出かけた次の言葉はまるで、声を失ってしまったかの様にぴたりと出なくなった。




しばらくして、なんだか申し訳無く思いしゅんとしていた私に、隣から溜息が降ってきた。

びくりと肩を震わせば、くすりと笑い声が聞こえた。



「そうだね。君がそこまで言うのなら、少し休憩しようか」

そこで初めて、ぱたんと書物を置く彼。

そしてふわりと心地好い香が鼻を掠め、その後膝に掛かる重み。



「!やだ、ちょ、ちょっと…」
「あぁ、やっぱりななしの膝は落ち着くよ」
「で、でも…寝るならちゃんと布団で休んだ方が、」
「此処が良いんだ」


駄目かい?なんてその儚げな困り笑いで見上げられれば、反論の言葉は何処かへ行ってしまった。



起きたら、花でも見に行こうか。
そう、ぽそり呟いて、彼はゆっくり夢の中に堕ちていった。




もう寝息をたてている彼の髪を撫でながら、早く目を覚ましてくれないかなあ、なんて。

ひとりそんなことを考えれば、ふわり笑みが零れた。




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