■夢の園 連載物

□愛=mc2 第五話
1ページ/4ページ


第五話


初めて桜を見た時、俺は夢を見ているような感覚だった


公園に佇み、少し虚ろな表情で、どこか遠くを見ていた


蕾をつけていた桜の花が何故か咲いていた
桜の周りだけ花びらが舞い、包み込まれているように見えたんだ
桜の周りだけ空気が違う気がした、夕方だって言うのにぼんやりと温かい光があったから


夢を見ているのかもしれない


そう思ったんだ、でも、その後に声を聞いた
一人の男が桜の腕を掴んでいた
俺は竹刀を構えていた
私闘は禁じられている、でも、守らなきゃいけないと想ったんだ
男達が立ち去っても、桜はどこか虚ろだった
怪我をしたのかとも想ったけど、聞いてもそうじゃ無いといった
そして聞かれた


「今って何年?」


俺の応えに悲しそうに眉を寄せた
俺は自分が言った言葉に何故こんなに悲しい顔をするのか分からなかった
気が付けば公園にいたと言うから
俺はそのまま桜を爺様の家に連れて行った
爺様に話し一緒に暮らすようになった
俺に名前をつけてほしいと言った顔が綺麗でドキドキしたのを憶えてる
同時に公園で見た花びらを舞い散せ佇む姿を思い出した
どこか幻想的で儚い姿、その姿が印象に残っていたのもある
桜と名前をつけた、でもそれが良かったのか俺にも解らない
だけど嬉しそうに言ったんだ、ありがとうって
綺麗に、柔らかく俺に微笑んでくれた事が嬉しくて、俺はそれから桜と一緒にいたいって思った
桜が嬉しそうに話すのを俺は見ているのが好きだった


でも、桜は時折、遠い目をしてどこかを見るんだ
俺の前にいるのにいない、俺に話しているのに俺を見ていない
何を思っているのか聞くのが怖かった
桜の記憶が戻れば俺の事を忘れてしまうんじゃないかって想った
桜には何かとても大事な、大切なものがあって
でも、それを聞く事が出来なくって、俺はどうして良いか解らない



桜と一緒に出かけた時、服を選んで欲しいと言われたけど、俺は良く解らない
でも、桜がどっちが良いかって聞いてくるから、淡い桜色の服が良いって言ったんだ
柔らかな色は桜に良く似合うと想ったから
楽しそうに買い物をする桜、笑った顔が可愛いって思った
なんだろう、クラスの女の子を見ても、そんな事を考えた事もないのに
桜は違う、綺麗で可愛いって思える
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ