■夢の園 連載物

□愛=mc2 第七話
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第七話


弦ちゃんと一緒に行った海で拾ってきた貝殻達
絵の宿題を書くと言って絵の具と画用紙を持って、その日弦ちゃんは帰ってきた


「桜、これだぞ」
「どんな風に書くかは弦ちゃんが考えるのよ、私はお手伝いなんだから」
「もう決めてるよ、貝殻持ってくる」


縁側に広げた貝殻と小瓶、プレート達
サクサクと書き始める弦ちゃんは、迷う事無く書き進んでいった


側で見ていれば、砂浜の上に散らばる貝殻と小瓶達、波打ち際なのか少しだけ海も描かれていた


「砂浜に打ち上げられた貝殻ね」
「そうだ、あの日もそんなのたくさん見たからな、どうだ?」
「良いんじゃない?……貝殻も色々な色が有るからとっても色彩豊かよ」
「さっさと終わらせないと月曜に間に合わないからな」
「そうね、明日も明後日も稽古遅いって言っていたものね、大丈夫よ」
「うん」
「じゃぁ、洗濯物入れちゃうね、隣で一緒におたたみしようかな」


縁側から庭に出て洗濯物を入れていた、ふと後ろを見れば、弦ちゃんが真剣に絵を描いている
こんな日々が続けば、私は帰れなくなるかもしれないわね
手にかけた洗濯物を縁側に置き、そのまま弦ちゃんの横でたたみ始めた


「桜………この貝殻の色、どうやったら出るだろう?」
「どれ?……青と、黄色……そうね……少し茶色混ぜてもいいかもね」
「青……黄色と…茶色これを混ぜるのか?」
「全部混ぜちゃダメよ、ちょっとだけ真ん中で混ぜて、中間色も残しておくの、それで塗れば混ざった色がかけるから、少しずつかいてみるといいわ」
「へぇ………あっ、本当だ、これなら、影も付けれるしいいな」
「でしょう?……弦ちゃん、絵が上手いのね」
「そうか?俺は想わないけどな…」
「そんな事ないわ、私は好きよ、弦ちゃんは苦手な教科とか無いの?」
「苦手は無いけどな、爺さまが何でも勉強しろって、全てが修行だからって、だから…」
「そうね、知らないで損をしたり、恥をかいたりするけど、知ってて損は無いものね」
「そうなのか?」
「そうよ、お爺さんの言うように全ては修行ね」
「うん……」


苦手が無いって言ってたけど、お爺さんが弦ちゃんに苦手意識を植え付けないように、そう言ったのね
やっぱり、お爺さんは弦ちゃんが可愛いのね、………真っ直ぐな子


「桜、これ以上描けない、色が混ざるんだ」
「そうね、絵の具が乾かないと無理かもしれないわ」
「今日はこれで良いや、稽古行かなきゃなんないし」
「もう、そんな時間?あら、本当だわ、何か食べていくでしょう?」
「食べる!腹減った………」
「ふふ、摘める物作るから、手を洗っていらっしゃい」
「解った」


台所へ向い、晩御飯の用意をしつつ、弦ちゃんのご飯も作っていた
帰ってくるのが八時を回るから、何か食べていかないと持たないだろうし


!っ………


一瞬眩暈がした、頭の中を何かが掠め、ズキズキと言う痛みが襲う
周りの景色がゆっくりと揺れていく
ダメ…そう想うのに、体から力が抜けていく
遠くで弦ちゃんの声が聞こえた気がする
何とかしなきゃ……
心配しちゃうのに…
私の意識はそこで途絶えた
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