過去Clap

□拍手B
1ページ/1ページ


空気が氷のように冷たくて、手袋をしているはずなのに、もう指先の感覚が麻痺して来ている。

晩御飯の支度をしなくてはいけなくて、でも買い忘れた物がいくつかある事に気がつきコートを羽織って外に出た。


一段と冬の厳しさが増し、マフラーを巻いてくれば良かったと後悔する。
昔から自分はいつも要領が悪い。

「ハァ…」


息を吐くと白い靄が出て、また消える。
幼い頃は、それが楽しくて何時間もそうして遊んでいたっけ。
そんな私にいつも付き合ってくれていた一つ上の従兄弟のネジ兄さん。

困った事があれば、いつも彼が助けてくれていた。
色んな思い出の端々に彼がいた。
でもいつからか、彼は私を遠ざけるようになった。
あの頃の私は、ただ嫌われたのだと悲しくなった。
でも本当は、そんな単純な事ではなかったのだと後々気づかされる。

彼の奥深くの闇を知り、私は涙を流した。
泣いて今さらどうなる訳でもない。きっと彼の方が泣きたかったかもしれないのに…


『ヒナタ様のせいじゃない』


彼はそう言って、私の頭を撫でてくれた。
その時、幼い頃の優しい彼がそこにいてまた泣きたくなった。


「ヒナタ様?」


冷たい空気を響かすように私は呼ばれる。
後ろには、彼が立っていた。
任務の後なんだろう。服のあちこちに泥がついていた。


「ネジ兄さん…」


駆け寄ってくる彼。
綺麗な長い髪が、ふわりと舞う。

「買い物ですか?」


「はい、買い忘れた物があって…」

「言ってくれれば買いに行ったのに」


「いいの、だってネジ兄さんにこうやって会えたから」


彼は私の荷物をそっと持ち、そして空いた私の手を繋ぐ。


冷え切ってしまった体は熱を帯びる。


「おかえりなさい」


「ただいま」


こうやって言葉を交わす。
ただそれだけで、心がキュンとする。
寒さのせいだと思ったがそれだけではない気がする。


彼も同じだったらいいなぁ…


私は、彼に気づかれないようにフフッと笑った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
何故か私の中でネジとヒナタの二人は冬が似合う気がしてなりません。
ヒナタとネジ。
大好きな二人です。

ことは
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ