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□君の背中越しに
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ナルトが自来也様との修行の旅から帰って来て、数ヶ月。
里は立派になったナルトを歓迎し、女の子達からは、モテ始めたナルト。
私は、あの日からナルトに上手く接する事が出来ないでいる。投げ掛けられる笑顔を見るだけで胸が苦しくなる。
だから余り一緒にいたくないけど、私とナルトは任務で同じチームになる事が多い。
「はぁー……」
「ちょっと、重いため息なんてつかないでよね」
「幸せが逃げるわよ?」と幼なじみのいのが向かいの席に座り、お弁当を広げ食べ始める。
「うるさいなぁ…」
「それが、貴重な昼休みを削ってまであんたの恋愛相談に乗ってあげてる私にいう言葉!?」
いのはお弁当の玉子焼きが食べながらサクラを睨む。
「分かってるわよ…ごめん」
「ぐだぐだ言ってる間に言っちゃえばいいじゃない」
「でも…ナルトは今も私がサスケくんの事好きだって思ってるし……ナルトだって私の事好きかも分かんないし……」
サクラは、こつんとテーブルにおでこをぶっけた。
そんなサクラの姿にいのが苦笑する。
昔はサスケ君をサクラと取り合っていたっけ……
あの時は、どちらがサスケを振り向かせる事が出来るかいつも張り合っていた。当人のサスケは全く興味を示さなかったけど。
サスケと同じ班になったサクラを羨ましく思ったのを今でも覚えている。
恋も忍としてもサクラに負けたくなくて会えばいつも口喧嘩をしていた。
淡く激しい初恋の思い出だ。
あの時は、私達はずっとサスケくんが好きで取り合うんだと思ってたけど、人間の気持ちって変わるもんねぇ。
サスケくんに猛アピールしてたサクラはどこにいっちゃったのよ。
「相変わらず、中身はよわっちぃまんまね」
「なっ……!」
「昔のサクラなら、当たって砕けろ!ぐらいな事言ってたわよ?」
いのは、左肘を立ててそこに顎を乗せ首を傾げる。
自分よりも女らしいいのの仕草にイラっとする。
「分かってるわよ!!……でも自分の気持ちを受け入れてくれなかったらって思うと恐くて動けないのよ」
いのの言う通り、昔の自分ならこんなにうじうじ悩んでなかった。
少し歳を重ねただけなのに、えらく自分は恋愛に臆病になってる。
「ばっかねぇー」
「はぁ?」
いのはサクラを見てにやりと笑う。
「ナルトは今でもあんたの事が好きに決まってるでしょ」
「や、止めてよ…それって昔の事じゃない!最近は「好き」とか言ってくれないし…」
「あったり前でしょーが!!あんた、ナルトが昔みたいに「好きだ!」なんていうバカだったら、私が張り倒してるわよ!!それだけナルトも成長したって事でしょ?」
「まぁ…そぅだけど…」
「あんたもたまには素直になったら?」
元恋のライバルだったいのからのアドバイス。
「じゃぁね」と片腕を振っていのは去っていった。
素直になれるならやってるわよ。
あーぁ……伝わればいいのに。
「サクラちゃん?」
いきなり自分を覗き込む、悩みの種でもあるナルトの顔に驚いて椅子のまま後ろに下がる。
「な、何?」
「午後から綱手のばぁーちゃんの資料整理頼まれてただろ?」
「あっ…」
そーいえば、そんな事頼まれたと今思い出した。
「資料室で待ってたんだけど、サクラちゃん来ねぇし。探しに来たってばよ」
そう言って笑うナルトの顔は何一つ変わらない。
サクラの心が音を奏でる。
ヤバい…今のは反則よ。
赤くなる頬を隠す為に、サクラはナルトから視線を外す。
「ごめん…忘れてた…」
「サクラちゃんが忘れるなんて珍しいってばよ…」
「うん…」
「なんかあった?」
「えっ…?」
「最近サクラちゃん、ぼっーとしてるってばよ…さっきいのに会って、サクラちゃんが悩んでるって言ってたから、俺でも役に立てばって思ったんだけど…」
イノブタめ…余計な事を。
悩んでるのはあんたの事なんだけどね…なんて口出して言える訳ないじゃない。
サクラは無理に笑顔を作ってナルトを見る。
「大丈夫よ!心配しないで!」
「うん……なら言いだってばよ」
「心配してくれてありがとね、ナルト」
サクラは歩き出す。