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□失恋よ、さようなら、笑顔よ、こんにちは。
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「あの…あのね?ナルト君……」


ヒナタは目の前にいる金色の髪の青年を見て、くらりとめまいを起こしそうになるが、ぐっと両足で踏ん張った。


(もう……逃げたり、隠れたりするのは…嫌だから…自分の恋心に決着をつけたいの)



ジリジリと肌に照りつく太陽を感じながら、ヒナタは、ナルトを好きになった経緯をぼんやり思い出していた。












ヒナタが、ナルトに初めて出会い憧れるようになったのはアカデミーの頃。


幼かったから大人達がどうしてナルトを避けるのかは知らないが、昔からナルトは一人だった。

アカデミーにはシカマルやチョウジやキバがいたが、夕暮れの中寂しそうに帰るナルトを何度か見かけた事があった。

ナルトにもツラい事があるのだと幼いながら思った記憶がある。


苦しい事が沢山あったはずなのに、太陽のようなナルトの笑顔をヒナタは堪らなく好きだ。

そして、ナルトが人一倍負けず嫌いで努力家だと知り、自分も負けてられない、強くなってナルトに認めてもらいたいと思ったのは下忍になった頃。

その間もずっとナルトに憧れ、そしてこれが恋なのだと気付いた。
ナルトように強くなりたい。
ナルトのように自分の未来をあんな風に信じる事が出来たら…
ヒナタはいつもそう思っていた。


近くでナルトを見つめ続けていたから、ナルトはサクラが好きなの事を勿論知っていた。
ヒナタ以外の仲間達も気づいていたけども。


サスケが里を抜けて、サクラとナルトの仲は急激に変化していった。
サスケが居なくなった後ヒナタは一度、泣いているサクラの頭をただ隣で撫でていたナルトを見た事がある。
あの時、きっとナルトも心の奥でサクラと同じように、泣いてるのだろうと思った。


そして、自来也との修行から帰って来たナルトとサクラは、しばらくして付き合い始めた。
幸せそうに笑う二人を見て、これで良かったのだとヒタナは思う事にした。


(私がナルト君に抱いていたのは憧れだけ…)


ヒナタはナルトへの恋心にそっと蓋をした。








「どうしたんだってばよ?ヒナタ?」


ナルトに名前を呼ばれて、自分がトリップしていた事に気づき、慌てて首を左右に振る。


「な、何でもないよ!!」


「で、話って何だってばよ?」


怪訝そうに瞳を細めヒナタを見るナルト。
ナルトの視線にドキっと心臓が跳ねる。
ヒナタはゆっくりと深呼吸をする。
肺に送られた新鮮な空気で、さっきまで早かった心拍数もゆっくりと穏やかになった。


「わ、私ね………ナルト君の事……」




自分の高鳴る鼓動に耳を傾けながら、記憶の片隅でヒナタは、自分の背中を優しく押してくれたある人の事を思い出した。











ナルトとサクラが付き合い始めて数ヶ月。
いつもと同じように、ネジと手合わせを終えて縁側で沈んでいく夕陽を一人で眺めていた時だった。


「気持ちは落ち着いたんですか?」


背中からネジの声が聞こえて、思わず振り返った。
帰ったと思っていたネジが柱に寄りかかり立っていた。


問われた意味が解らず、答えないでいると、ハァと息を吐いてヒナタの隣に腰を落とす。


「ナルトの事ですよ」


淡々としたネジの声。
昔は苦手だったこの声にも随分慣れた。
最近は前よりも優しい声で呼び掛けてくれるようになった。

それよりも今は、ネジが『ヒナタはナルトの事が好き』という事を知っている事に驚き、ネジを見る。


「ネ、ネジ兄さん…どうして?」


「見てれば分かります、ヒナタ様の行動は極端ですから」


ネジはくくっと喉を震わせて笑う。ヒナタの顔はみるみる真っ赤に染まる。



「な、ナルト君も……し、知ってるの?」


「知る訳ないでしょ、あの鈍感なナルトが」


ネジの言葉に安堵する。

自分の気持ちに蓋をして忘れようとしてたのに、思い出してしまった。


ナルトの事もサクラの事もなるべく耳には入れないようにしていたのに。
自分の気持ちに目を背けて、気付かないようにしていた


「そっか……」


三角座りをして膝の上に顎を乗せるヒナタ。


ネジはそっとヒナタの頭を撫でる。
撫でられたヒナタは、瞳をパチクリと動かしネジを見た。


「…………///」


「どうかしましたか?」


「だって、ネジ兄さんがそんな事するなんて……変なんだもの」


「ヒナタ様が落ち込み過ぎだからですよ」


「お、落ち込んでなんかないもん!」


「……いつもよりぼんやりしてるじゃないですか」


「そ、そんな事……!」


「それにいつもより修行に身が入ってないですし」


「……ある…かも」


最近ネジの行動がよく分からない。
からかわれたと思えば、次の瞬間には優しくされたり……。



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