Gift

□きっと、恋
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…なんか変だ。
いや、有り得ない。
最近の私はおかしい。


ナルトが無事に自来也様との修業を終えて帰って来て、嬉しかったし安心した。

またカカシ班で任務する事が出来るだけでワクワクしてる。


ただそれだけでしょ?私。そうよ、それだけ。
他にはなんの理由もない。


じゃぁ、なんでこんなにドキドキするのよ……


ナルトと二人っきりという状況に動揺している。

どうしちゃったのよ?私。


「あ――っ!!おせぇってばよ!カカシ先生ぇ!!な、サクラちゃん!」


いきなりナルトに名前を呼ばれて、ドキッとする。


「……そ、そうね」


相変わらずカカシ先生は、約束の時間を過ぎているのにまだ現れる気配はない。

素っ気ない私の言葉にナルトはきょとんとしている。


「どうしたんだってばよ、サクラちゃん。腹でも痛ぇの?」


ナルトが心配そうに近づいて来た。
その度に私の鼓動が速くなっていく。


いやいやいや…
だから有り得ないんだってば!!


私は、少しでもナルトとの距離を保とうと後ろに下がる。


なんで、私がナルトの事なんて……
私が好きなのはサスケ君でしょ?

そうよ。
あのナルトにこんな感情を抱くなんて有り得ない……はず…


じゃぁ、どうしてさっきからこんなにも心臓は煩いんだろう…―


ハッと気が付いた時には、ナルトの顔がすぐ目の前にあって、私は視線を合わせられなくて俯いた。

いつからこんな大人っぽい表情するようになったのよ…

会えなかった間に、ナルトは少年から青年になっていた。

その変化に戸惑う私。

意を決して見上げると、広い海のような蒼い瞳に見つめられて甘い痺れを感じた。


「サクラちゃん?」


少し低めの声で私の名前を呼ぶ。

私の頬はこれでもかって程に赤くなる。


「………何よ」


取り敢えず、私のこんな心境をナルトに知られたくないので、要らぬ強がりを見せてみる。


「顔赤いってばよ?まじで大丈夫?」


「な、何でもないからっ!」



怪訝そうなナルトからダッシュで離れて距離を取った。


ヤバい…
私、ナルトの事……
だって、それ以外この気持ちを表す言葉が見つからない。



二人は、少し離れて向かい合う形になる。
その間を秋の爽やかな風が通った。


少し落ち着いた鼓動に耳を澄ましていると、ナルトの声が聞こえた。


「サクラちゃん、俺といるの嫌?」


「…………え?」


私のせいで明らかに誤解しているナルトに、何か言わなくちゃと思うのに、上手く言葉が出ない。


「…俺ってば、久しぶりにサクラちゃんと会えて、一緒に任務が出来るから嬉しかったんだけど…」


サクラちゃんは同じ気持ちじゃなかったんだ…とナルトは、苦笑しながら頭を掻く。


「ちがっ…」


「俺だけ、張りきってて馬鹿みてぇ…」


吐き出すように言葉を発するナルト。


やめてよ…
あんたにそんな顔させたかった訳じゃない。


寂しそうな顔のナルトを見て、頑なだった私の心は解されいく。


「…違うわよ…馬鹿」


「………?」


ナルトは首を傾げた。

認めてしまえば、凄く簡単な事。

ナルトといるだけで速くなる鼓動の訳も、見つめられて赤くなる頬の訳も、全てナルトに繋がっている。


「………あ、あんたが近くにいるだけで、ドキドキするの!ただそれだけ///」


「…………!」


私の言葉に鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして、段々と赤くなるナルト。


私もそんな姿につられて頬が熱くなるのを感じる。


「……あ、あの、あの、サ、サクラちゃん?どういう事だってばよ!?」


吃るナルトの姿が可笑しくて、私はこっそり笑う。


「さぁ?よーく考えてみれば?」


私は、恥ずかしさもあり、ナルトに背中を向けた。
当分ナルトの顔を真正面から見れない気がする。

背中越しに、ナルトが頭を抱えて悩み始めた声が聞こえる。






この秋空のように真っ直ぐな透き通った君への気持ち。
名付けるなら…




きっと恋。


end
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