ちょこっと文
□棺の外
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お前は本当に最悪なやつだ
ついこの間まで俺の隣にいたのに
笑っていたのに
突然他のやつのところに行っちまうなんて
何も言わずに勝手に
俺に黙って
白い髪をすくい取れば
いつもの様に俺の手に絡みついてくる
撫でてやれば
柔らかな髪が指先に甘えてくる
その寝顔すらいつものように
静かに寝息をたてているようだ
頬を撫でてみれば…
滑らかな肌
それなのに
氷のように冷たくて
硬くなっている
「起きろよ…モヤシ…」
そう声をかければいつもみたいに目を擦りながら起き上がりそうだ
それなのに
こいつはもう目を醒ます事はない
俺に話し掛ける事も
喧嘩する事も
甘い声を出す事も
俺の隣を歩く事も
抱き締める事も
笑い掛ける事も
もう何もする事はない
それでも叶う事ならば
最後に欲しいものがある
願う事が許されるならば
最後に一度だけでいい
お前の…
ぬくもりが欲しい
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