1st(創作)

□一緒
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「ご主人様、お帰りなさい」


いつもの態度、いつもの笑顔で私は仕事終わりのご主人様をお出迎えします。


「ただいま」


ご主人様は疲れた素振りを見せながら、溜息をついて玄関に腰を降ろしました。

ここまではいつも通りです。
そう、ここまでは…



ご主人様から女の人の臭いがする。
今まで嗅いだことのない、甘い香り。
お母様の匂いでもない、私の匂いでもない。


「何ですか…この香り」


「あぁ、今日仕事でさ」


ご主人様はにっこりと笑って答えた。
私もそんなご主人様ににっこりと微笑み返す。


「ご主人様、長時間その女と一緒にいたんですね」


「仕方ないだろ。仕事なんだから」


人聞き悪いなぁとでも言いたげに、ご主人様は顔をしかめた。

顔をしかめたいのは、私の方です。


ご主人様を愛しているから不安で不安で仕方がないだけなんです。
決してご主人様に憎しみ等は抱いていません。
だけど、今は…もうどうにかなってしまいそうです…


「ご主人様…」


ご主人様は「ん??」と言いながら顔だけをこっちに向けた。


「本当に私の事、愛してますか??」


「勿論」


スーツのホコリを叩きながら、ご主人様は立ち上がる。


「じゃあどのくらいですか??」


「食べちゃいたいくらいだよ」


「それは、体を重ねるという意味での??それとも、本当に食べてしまいたいということ??」


私は目の前のご主人様を見つめた。
どうしてこんなにも愛しいのでしょうか??


「体を重ねるという意味でのに決まってるだろ」


そう言いながら、ご主人様は私に抱きつく。
ご主人様の温もりがひしひしと伝わってくる。


「そうですか…」


ご主人様の腕の中で少し残念そうに答える。


「私もご主人様を食べてしまいたいくらい愛しています。でも、ご主人様とは訳が違いました」
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