私は恋する人魚姫

□第二話
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「わァ!」

海面から顔を出してみると、空には綺麗な光のようなものが光っている。

「えーっと、たしか花火とかいうのだっけ?」

うっとりと見つめていると、隣を船が通っていく。


「・・・おもしろそうアルな!」

「何が面白いって?!」

振り返ってみると鬼のような顔の新八がいた。







第二話









「どれだけ僕に心配かけたら気が済むの?!
こんなに浅瀬まで来て!ほら帰るよ!」

「嫌ヨ!まだ帰らないアル!
せっかく上に来たんだからもう少し人間を観察するネ!」

「もう!我儘ばっかり言わないでよ!
上に来てること坊主さんにバレたらどーするの?!
・・・あれ?神楽ちゃん?」

新八が気づく前にそっと船に近づいた。


「ちっちゃい船アルなァ。なんだっけ?
屋形船とかいうやつアルか?」

船につかまって、中を覗いてみる。
どうやら宴会のようだ。
どんちゃん騒ぎで賑やかだ。


「へえ〜楽しそうアルなァ・・・」

なんだかこちらまで楽しくなってきた。


「あ!誰か来るアル・・・」


中から一人、こちらに向かって歩いてくる。
見つからないように船に背を向けてへばりついた。
誰が出てきたのかそっと見上げてみると・・・



―――わあ・・・銀色アル・・・・




綺麗な銀色の髪をもった男の人がグラスを片手に船の手すりに手をついて夜空を見上げていた。
花火の光で銀色がいろんな色に染まっていく。
その銀色から私は目が離せなくなってしまった。
胸の鼓動が速くなっていくのがわかる。


―――あれ?変なの・・・
なんかドキドキするネ・・・





「銀時、中に戻らなくていいのか?」

中からまた別の人間が出てきた。
黒髪の長髪の男だ。


「あー・・・いいんだよ。
ちょっと外の空気が吸いたくてよォ。」


―――へえ銀時っていうアルかァ・・・それに低くていい声してるネ・・・。

また鼓動が速くなった気がする。




「あ!見つけた!神楽ちゃん!」

「?!」


ドカッ!

新八が私を見つけて大声をあげたので、反射的に新八を殴りつけて気絶させた。
新八は鼻から血を流して浮いている。


「ごめんアル新八・・・でもいきなり大声出すお前も悪いアル!」

気絶する新八に言い訳をしてまた「銀時」っていう人を見ようと顔を戻すと、もう彼はいなくなっていた。


「・・・。
新八のせいでどっか行っちゃったネ・・・。」


つまらなくなって、鼻まで海につけてぶくぶくと空気を吐いた。


「おい!・・・なんだよこれ!」



ふと船の中から大きな声が聞こえてきた。
なんだか騒がしい。


「た、大変!・・・火事よ!みんな逃げて!」


「?!」


―――えーっと、かじって・・・かじってなんだろう?

「かじ」の意味がわからなくて悩んでいると、近くにいた別の船が異変に気づいて近づいてきた。
いそいで中の人達はそちらに移っていく。
銀時っていう人もそちらに移っていった。



「これで全員か?!」

「はい。たぶん。」

「よし!出すぞ!」

助けにきた船が離れていく。
もともと乗っていた船は「火」ってやつが包みはじめている。

―――なるほど。こうなっちゃうのが「火事」っていうアルね。

一人納得しながら、意識のない新八を引っ張って乗り移った船に付いて行く。




しばらく行くと、いきなり船が止まった。

「ちょっと待て!山崎がいないぞ!」

「山崎ィ?誰ですかィそれ?」

「おい、総悟、そりゃあねえだろ。」

「冗談でさァ。山崎なら船酔いしてトイレに籠ってゲロゲロしてやしたけど。」

「お前それほってきたのか?」

「いや、山崎がほっとけって言うから。」

「いやいやいや!そこほっといちゃいけねえだろォが!」


なにやらまた船の中が騒がしい。

「おい!どォすんだよ!」

短い黒髪の男の人が、茶髪の男の人の胸倉をつかんでぐらぐら揺らしている。

「あーもー!うっせーなァ!
わーったよ!俺が行ってくっから多串君はちょっと黙ってろ!」

いきなり「銀時」って人が立ち上がって、非常用のゴムボートを海にうかべた。
私は急いで船の陰に隠れる。


「銀時?!正気か?」

「俺はいつでも正気だっての。
ちょっと行ってくっからお前らは先に戻っってろ。」

そう言ってゴムボートに乗り込む。

「待て!俺も行く。」

さっきの「多串くん」が出てきた。


「俺一人でいいっての。
邪魔だから多串君は大人しく帰っててください。」

そう言ってさっさとボートを漕いでいく。

「おい!ちょっと待て!」

その声に耳も貸さずに、さっさとボートをこいでいく。

私も急いで付いて行った。


あの船まで結構な距離が離れている。
「山崎」って人、無事だといいけど・・・。

私もボートが進むのを海の中から手伝った。




―――――――――――


「・・・やべーなこれは・・・・」


船はもう火に包まれてしまっていた。


「おーい!山崎くーん!いるかー?」


「銀時」さんは辺りを見回し叫んだ。

私も海に沈んでしまったりしていないか海中を探したが、やはりいなかった。


―――海にいないってことはまだ中に・・・


「・・・しゃーねえ・・・中入ってみっか」

「?!」


ーーーそんな・・・この中に入ったりしたら「銀時」さんが・・・



そう思っている間に銀時さんは海水を被って船の中に入っていく。


私は彼の無事を祈りながら待つしかなかった。



「第二話」 end


2009.5.30

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