私は恋する人魚姫

□第三話
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「・・・やっぱり熱ィなァ・・」

額の汗を腕で拭いながらポツリと呟いた。
海の上でも火事は火事だ。

水を被って船内に入ってきたが、もうすっかり乾いてしまった。








第三話










なんとか中まで入ってきたが、船内は火の海だ。
いたる所が燃えていて、室温は半端ない熱さだ。

こんな状態で、本当にあの地味な彼は生きているのだろうか・・・?

ふと嫌な予感が頭をよぎったが、俺はまたジミー君探しを続けた。




「山崎くーん!生きてっかァ?!」

大声を出して船内を歩いていくが返事はない。


「・・・そういやトイレに籠ってるとか言ってたよな・・・」


ふと総一郎君の言葉を思い出し、急いでトイレの方に向かった。


あと少しでトイレのドアに触れる・・・というところで、俺の携帯の着信音が鳴り響いた。


「・・・ったくなんだよこの糞忙しい時に・・」

ぶつぶつ愚痴りながらもとりあえず電話にでた。



「はい。ちょっと今取り込み中なんで、また後で・・・」

「旦那ァ!すみませんでしたぁぁ!!
僕です・・・山崎です!」

電話の主は俺が今必死で探していた山崎君だった・・・。


「え・・・あの・・これどういうこと?」

驚きのあまり、声が裏返ってしまった。


「旦那ァ、すいやせん。山崎もちゃんとこっちの船に乗り換えてたみてェでさァ。
トイレでずっとゲロ吐いてたらしいです。
いやぁ〜地味すぎて気付きやせんでしたねェ。」

電話から総一郎君の冷静な声が聞こえてきた。

「え・・・じゃあ俺何しにココ来たの?」

「さァ?なんででしょうねェ。まァとにかくみんな心配してるんで、頑張って帰ってきて下せェ。それじゃ!」

「え・・・ちょ、それじゃって何?
ちょっとォォォ?」


プーッ、プーッ・・・














―――ええええええええ?!



何これ?!何この扱い?!



俺ジミー君のためにここまできたんだけど?!




「やってらんねェよコノヤロオオオオ!!」


俺の善意のあまりにも悲しすぎる結末に、思わず発狂してしまった。


ガタン!



「!」



すっかり燃えてしまった柱が、崩れてきた。


「・・・ッあっぶねェ・・」


間一髪でよけることが出来たが、あと少し遅かったら直撃していただろう。


「俺もそろそろこっからでねェとやべェな・・・」


すっかり屋根にも火が回っていて、崩れてきそうだ。
急いで元来た道をたどり、ゴムボートまで走った。



ガタガタン!!


「?!」


あと少し、というところで、屋根が崩れてきた。
その瞬間、俺は後頭部に鈍い痛みを感じて意識を手放した。



「第三話」 end


2009.6.2
 

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