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□甘えんぼ
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「か〜ぐらァ〜」


「・・・銀ちゃん・・・うざい。」








甘えんぼ








今俺はソファーでテレビを見ながら酢昆布をかじる神楽に後ろからべったり抱きついている。
いいおっさんが何やってんだよって自分でツッコミてェところだけれど(新八によくツッコまれるけどな)、どうもやめれそうもない。
顔を近づければ、こいつ独特の甘い、いい香りがするし、肌を撫でればなんとも言えない柔らかくてなめらかな感触、そしてなんといってもこの抱き心地。
夜だけでは物足りなくて、最近じゃ新八がいようが関係なく抱きついてしまう。




「もー!銀ちゃん暑いアル!離れるヨロシ!」




まあ神楽にはウザがられるけどな。





「やだね〜。銀さん今丁度いい感じだし。」

そう言って腰にまわした腕に力を込める。


「私は暑いアル!だから離してヨ!」

神楽がこれでもかというウザそうな顔で俺を見上げる。

「ダメー。銀さんさびしがり屋さんだから神楽ちゃんから離れたら死んじゃう。」

「じゃあ死ねヨ。」

「神楽ちゅぁん?!それひどくね?!」

「銀ちゃんがうざいのが悪いアル。」

冷めた目で俺を見つめてそう言うと、赤い酢昆布の箱をいじり始めた。



「あ!もうないアル!」

箱を下向けて振っているがどうやらもう空っぽらしく、白い粉しか出てきていない。

「銀ちゃん!私買いに行ってくるネ!」

そう言って俺の腕から抜けだそうともがき始めた。


「酢昆布なんていいじゃねェかよ〜。銀さんの相手してくれよ。」

「嫌アル!酢昆布がないと私生きてけないネ!
銀ちゃんはジャンプでも読んどくヨロシ!」

「今銀さんはジャンプより神楽ちゃんがいいんですぅ〜。」


「ウゼーヨ!新八ィ〜!このマダオなんとかするネ!」

「神楽ちゃん、そのマダオは僕の手には負えないよ。」

「だってよ。神楽!
だいたい夜はあれだけ甘えてくれんのになんでだよ!
まァ布団の中で俺とヤって・・・ゴフッ!」

顔を真っ赤にした神楽の拳が俺の顔面にばっちりめり込んだ。


「新八ィ〜私酢昆布買ってくるネ。」


「はーい。いってらっしゃい。」





―――――――――――





「ったく・・・神楽の奴思っくそ力込めやがって・・・ん?」


殴られた所を擦りながらコンビニまでの道を歩いていると、少し先で男共が女に絡んでいるのが見えた。
まあ歌舞伎町じゃよく見る光景だ。
特に驚きもせず近づいていくと・・・


「ねェ〜君超可愛いじゃん!いくつ?」

「17才アル。わかったらさっさと私の目の前から消えるヨロシ。」


ん?この声・・・神楽?


聞き覚えのある高い声が聞こえて足を止める。



「そんな冷たいこと言わずにさァ〜、俺らと遊んでくんねェ?」

「私お前たちと遊んでるほど暇なレディじゃないアル!」

「え〜おねえちゃん働いてるわけでもないんでしょ〜?だったらちょっとくらい付きあってよ〜」

「あー・・・すんません。残念だけどそれは無理っすわァ〜。こいつには俺の相手するっていう仕事があんだよ。」

神楽の腕をつかんでいる男の腕を掴んで神楽と男の間に割り込んだ。

「銀ちゃん!」

「あァ?なんだよ兄ちゃん?」


神楽は嬉しそうな顔をしたが、男共は俺を見るなり睨みをきかせている。


「俺らはこのおねェちゃんに用事があんだけど?」

「私はお前らに用なんかないアル!
さっさとどっか行けヨ!」

神楽は俺の裾を掴んで俺の後ろに隠れた。

「…だってさ。まあだからこいつのことは諦めてちがうねェちゃんとこ行ってくれや。」

そう言ってギロリと男どもを睨みつけて、男の腕掴んでいる手に力を込めた。


「っつ!なんだよ!男付きかよ!行こうぜ!」

男どもは諦めたらしくさっさと俺達から離れて角を曲がっていった。






「・・・銀ちゃん」

「ん?」

神楽が俺の袖をギュッと掴んで俺を見上げてきた。

「・・・ありがと!」

「お、おう。」

あ・・今なんかキュンってきた・・・


なんかさっきまで冷たくされてたから余計・・・。




こいつツンデレってやつだな。



しかもこのアングル最高じゃね?

なんか顔赤いし、上目づかいでなんか目潤んで見えるし・・・

・・・・。



「なァ神楽、酢昆布は買えたのか?」

「え…うん。いっぱい買ったアル!
これで当分酢昆布には困らないアル〜♪」

ニッと笑って俺に大量の酢昆布の入っている袋を見せた。


「じゃあもうすることないよな?」

「ま、まあ・・・そうアルけど・・・。」

怪しむような顔をしながら神楽が恐る恐る頷く。


「ぎ、銀ちゃん!言っとくけど夜まで新八は帰らないアルよ!」

にやりと笑う俺の顔を見て、神楽は俺の考えていることがわかったらしい。


「え〜銀さんもう我慢できねェよ。」

耳元で囁いてやると神楽の顔が耳まで赤くなった。

「だって新八が・・・」

「じゃあちがうとこで。」

「どこでヨ?」

「ここでとか。」

「は?!ここで?」

「まァまだ暗くねえけど大丈夫だって!
そこの路地とか!」

「嫌ヨ!外とか絶対嫌アル!」

神楽の制止の言葉を無視してスリットに手を入れて足を撫でる。

「嫌・・・や・・だ・・」

構わず腿を撫でまわしていると神楽がだんだん大人しくなってきた。

まァそろそろその気になってくれたのかもな。

口元を緩めてチャイナ服の留め具を外そうと神楽を覗きこむと小さく震えている。


「ん?どォした神楽?足撫でられただけで感じちゃった?」

「・・・ってんのに」

「ん?」


「嫌だっつってんだろォォがこのクソ糖尿天パ野郎ォォォォォ!!!」


――――――――――――――


「・・・で、また殴られたんですね。」

「・・・まあな。一瞬綺麗なお花畑が見えたわ・・ッてて。」

新八が消毒液を傷口にかけた。


「フン…銀ちゃんなんかそのままそのお花畑で永遠に蝶蝶でも追いかけとけばよかったアル。」

神楽は向かいのソファーでつんとそっぽを向いた。

「んだよひでーなァ…ちょっと足撫でただけだろーが。なァ、新八!」

「僕に振らないで下さい。」

「そうヨ。新八に助けを求めるなんて情けないアル。」

「お前ェだって新八に助け求めてただろォが!っつ!」

「よし!手当できましたよ。
あー・・・もうこんな時間じゃないですか!
僕そろそろ帰りますね。」

新八は救急箱を片づけるとさっさと帰り支度を整えた。

「えー!新八帰らないでヨ〜!この天パと私を二人きりにしないでヨ〜!」

神楽は新八に抱きついて引き止めようと必死だ。

「おい!何新八に抱きついてんだ!
お前が抱きついていいのは俺と定春だけなんだよ!わかったらさっさと新八から離れろ!」

「うるせーヨ!この絶倫天パが!
何勝手なこと言ってるアルか!
だいたいお前と二人きりになったら何されるかしれないネ!」

「馬鹿言ってんじゃねェよ!
そんなもん二人になったらやることなんてひとつにきまってんだろーが!」

「何堂々と恥ずかしいこと言ってるアルかァ!」

「あーもー!じゃあ神楽ちゃん僕の家に来る?」

俺達の口げんかにうんざりしたのか新八が俺と神楽の間に割って入った。


「え!ホントアルか?!」

「は?!」



このダメガネ!余計なこと言うんじゃねェよ!
やばい。こいつも乗り気だし、このまんまだったら新八ん家に行きそうじゃねェかよ!

あ・・・でも待てよ・・・。


「私新八の家行くアル〜!」

そう言って泊まりの準備を始めようとする神楽の肩を掴んだ。



「ちょっと待て神楽」

「何ヨ銀ちゃん。止めたって無駄アルよ」

冷たい目をしながら振り返る神楽。

「い、いや、俺はお前のこと思って注告してやるだけだ。
いーか?こういう真面目ぶってる奴に限って二人きりなったら何されるかしんねえんだ。
もしかしたら寝てる間にあんな事とかこんな事とかされるかもしんねェぞ?」

「しねーよ!それはアンタだろォがァァ!」

「マジでか!寝込みを襲うなんてマジキモいアル。
しばらく私に話しかけないで。」

「えええええ?!神楽ちゃんまで?!」

神楽はゴミでも見るような目で新八を睨みつけ、新八はといえば頭を抱えて「やってらんねーよ!」とぼやいていた。



ふッ・・残念だったな新八!
こいつちょっとおバカさんだから何でも俺のこと信じちゃうんだよな〜。
まあそんなとこも可愛いんだけど。
それに神楽は俺以外の男と寝泊まりしちゃいけねェんだよ。
まあダメガネでも男はみんな獣だからな。


「ふゥ・・・じゃあもう僕帰りますから。
もう喧嘩しないで下さいよ!いちいち手当するの面倒くさいんですからね!
それじゃ!」

この数分間ですっかりやつれた新八はとぼとぼ帰って行った。


玄関がぴしゃりと閉められて、途端に万事屋に静寂が訪れる。



「・・・・。」

「さあて、ようやく待ちに待った大人の時間だな。」

そう言って神楽の肩を抱き寄せる。


「別に待ってなんかいないアル。」

「銀さんはこのときを待ちわびてたんですぅ〜。ずっとムラムラしてたんですぅ〜」

「ひとりでムラムラしとくヨロシ!」

「んなこと言うなよ。銀さん昼間っから我慢してたんだからよォ〜」

「我慢できずに道で人の足さすってきた奴はどこのどいつアルか?」

「まあそんなこともあったな。」

「あったなじゃねェヨ!」

「だって、神楽ちゃん昼間はすんげェ冷たいし〜」

「そ、それは…新八がいるし…」

「それにナンパされてたしィ〜」

「それも向こうが勝手にしてきたアル!」

「まあとにかくお前見てるとそういう気分になるんだよ。」

頬をそっと撫でてやると神楽の顔がカッと赤くなった。


「万年発情オヤジ・・・。」

「はいはい。ありがとさん。」

「褒めてねーヨ!」

「まァいいからいいから。
とりあえず昼間の分まで神楽ちゃんには甘えさせてもらわねェとな〜。銀さん寂しかったし。」

「え・・ちょ、銀ちゃん!待つヨロシ!」


暴れる神楽を和室まで運んで、布団に横たえてさせた。
そして覆いかぶさって、耳元で低く囁いた。


「朝までその毒舌、使えねえようにしてやっから覚悟しとけよ」



さァて・・・長い夜の始まりだ。



fin



あとがき


カジ様お待たせいたしました!
ちょっと未来の設定にしちゃいました^^;
毒舌全開のつもりが、ちょこの力不足であんんまりな結果になってしまって申し訳ないです・・・。
あと無駄に銀さんが発情しててすいませーん!
返品&修正OKでございます!
リクエストありがとうございました!

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