★SHORT★

□わたしのゆめ
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あの日私は二つの夢を叶えるために地球を旅立った…。




一つ目は、もちろん・・・パピーと宇宙一のえいりあんばすたーになるっていう夢だ。




そして、二つ目は……










わたしのゆめ














私の15歳の誕生日・・・
パピーから手紙が来た。

私がいいなら一緒にこないかっていう内容だった…。


すごく迷ったけれど…私は決めた。


パピーと一緒にいこうって…。
本当の事を言えば…此処を離れたくなどなかったけれど…。






パピーと一緒に行くことを告げると、彼も新八も(もちろん定春も)私の背中を優しく押してくれた。

「ずっと夢だったんだろ?あのハゲと一緒にしっかり叶えて来いよ。」って…。
そう言う彼の目は凄く優しくて、私の胸を強く締め付た…。






あれからあっと言う間に江戸を発つ日がきてしまった。
私を見送りに2人と一匹もターミナルに一緒に来てくれていた。
もうすぐ出航時刻だ…。



「神楽ちゃんッ…ヒッ…頑張って…ヒック…宇宙一…のォ…ヒッ…えいり…あん…ヒック…ばすたーに…なって…ね。」

新八はボロボロに泣いていた。
しゃっくりあげながらも私に別れの言葉を告げてくれている。

「…やめろヨ。私まで泣きそうになるアル…。」

新八につられて泣きそうになる…でも泣いてしまったら此処を離れられなくなってしまう気がして、ぐっと溢れそうな涙を堪える。


----男のくせに泣くなんて、やっぱお前はただダメガネアル…。
そんなんだからいつまでたっても新八なんだヨ…。



「ヒック…ほらッ…銀さんも…何か言って…あげて下さいよ…。」

少し落ち着いた新八が彼の袖を引っ張る。


「………。」


彼はターミナルに着いてからずっと黙ったままだった。

新八に袖を掴まれて、困ったように頭をかいて私から視線をそらせている。

「…あ〜……まああのハゲによろしくな。」

そう言ってまたそっぽを向いてしまった。

「…銀さん…もう少しまともな別れの言葉はないんですか?」

新八がじと目で彼を睨む。

「ったくうるせーなァ!
今の別れの言葉の何処がまともじゃねぇんだよ?!」
「はァ?!全部!全てだよ!この天然パーマ!」
「んだと?!このダメガネが!!」

そして二人は取っ組みあいのケンカを始めてしまった。

……まったく…どうしようもない奴らだ。


私が居なくなったらどうなることやら。



すると、ふと、大人しく伏せて待っていた定春と目があった。

「定春…コイツらの事よろしく頼むアル」
「ワンッ!」
頭を撫でてやると嬉しそうに尻尾をふった。

「私が居なくてもいい子にしてるアルよ?」

「ワンッ!」

「私の事忘れちゃやーヨ?」
「ワンッ!」

「約束アル…。」

「クゥーン…。」

私が抱きしめると、定春も片方の前足で私の背中を抱いてくれた。
……約束アルよ……。


定春を抱きしめているとアナウンスが流れた。
もう時間みたいだ…


「お前達…今まで世話になったアルな…。」

私は二人と一匹の方に向き直った。

「…神楽ちゃん…。」
「………。」

ようやくケンカの手をとめて、2人はこちらを見つめている。

「まぁ…ほとんど私が世話してやったようなもんだけどな!
私が居ないと何にも出来ないダメな奴ばっかりで大変だったアル。」
「オイ!何勘違いしてくれちゃってんだこの子?!なぁ殴っていい?!」


「でも…私…此処でお前らと過ごした事…一生忘れないアル…。」

「………。」




「だ、だから…。」




「・・・・だからなんだよ?」




「………ううん。なんでもないアル。」






−−−やっぱり怖くて言えなかった…。


私はまだ一度も、また此処に帰ってくるとは言っていなかった。
彼もきっと…私がまた万事屋に帰ってくるだなんて思ってないだろう…。

だから…私はずっと2つ目の夢を彼に伝えきれずにいた。
伝えてしまったら彼を困らせてしまう気がするから…



「じゃあ!私そろそろ行くネ!
じゃあナッ!」

そう言って私はごまかしすようにそそくさと入場口に向かって歩き始めた。
新八の啜り泣く声が聞こえるけれど、きっと泣いてしまうだろうから後ろは振り返らない。





これでよかったんだよネ…
あなたの困った顔を見る位なら伝えない方がマシだから…





入場口に足を踏み入れようとしたその時…






「…神楽」








その声に私はハッと振り向いてしまった…







「いつでも帰ってこいよ」

「?!!」




……銀ちゃんは、私が今まで見てきた中で一番優しい目をして私を見つめてくれていた……


私の右頬を温かい物が一筋伝った。



「…うん…。」


左頬にも同じ物が伝う。





−−−銀ちゃんの馬鹿…。


せっかく我慢してたのに…。

私の努力を返せヨ…。



一度流れ始めた涙はなかなか止めることができなかった。



「おーおー…神楽ちゃんは泣き虫さんだねぇ…。」
ゆっくり私に歩みよって、そっと銀ちゃんが頭を撫でてくれた。

その優しさに余計涙が止まらなくなる……




−−−銀ちゃん…


あなたは…いつでも優しくて、
私はあなたに甘えてばかりだったよね……


でも…此処を旅立つ前に…
どうか…もう一度だけ・・・
私の身勝手な我が儘を、・・・
あなたに伝えるのが怖くてしかたなかった夢を聞いてほしい・・・




「あッ、あのねッ・・・ぎッ、銀ちゃん…ヒック
私…宇宙一の…えいりあんばすたーに…なるアル…ヒック…」
「…おぅ。」

「そうしたら…また…万事屋に戻ってくるヨ…ヒック…だから…また…あの桜並木を…一緒に見に行ってくれる…?」



…それは銀ちゃんと新八と3人で団子を食べながら見に行った桜並木のことだった。
それはそれは綺麗で…団子を危うくおっことしそうになったくらいだ。

だから…もう一度あの桜をこの目で見たい…。
出来るなら銀ちゃんと一緒に…。

「………。」

銀ちゃんは黙っている。
…やっぱり万事屋に帰ってくるなんて迷惑なんだろうか…。
私がえいりあんばすたーになる頃には…銀ちゃんの隣には違う女の人がいて…その人と桜を見たいかもしれない。
銀ちゃんもきっと、たまには万事屋に顔を出してもいいっていう意味であんな風に言ってくれたのかもしれない…。


こうして銀ちゃんを困らせてしまうのを私は一番恐れていたのに……。


銀ちゃんの返事が怖くて私は下を向いた…。



「?!」
突然小指を掴まれて銀ちゃんを見上げた。


「…約束だからな。
破ったらどうなるかしんねーぞ。」


そう言って銀ちゃんは私の小指に自分の小指を絡ませた。


「………上等アル。


指切りげんまん…嘘ついたら天パ千本ちーぎるッ指切った!」


私はニッと笑って入場口に向かって走り出した。








いつの日かまたあなたと見る、満開の桜を思い浮かべながら…







2つ目の夢…
それは…また万事屋に戻って来て、銀ちゃんとまたあの桜を見ること…



約束するよ・・・
絶対叶えてみせるから・・・
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