★SHORT★

□reason
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「ねえ母ちゃん、なんで父ちゃんと結婚したの?」



俺はふと母に前々からの疑問を訪ねてみた。






reason








母ちゃんは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにふふふと笑った。

そして当たり前のように、

「え?そんなの銀ちゃんだからに決まってるネ。
だいたい私と銀ちゃんが結婚してなかったら銀楽もこの子も生まれていなかったのヨ。」

と言って、愛しそうに大きなお腹をさする。
母ちゃんの腹の中にはもうすぐ俺の妹になるであろう命が宿っている。


「なんでそんなこと聞くアルか?」

母ちゃんは不思議そうな顔をして逆に俺に尋ねてきた。


「え・・・だって、母ちゃんはすんげえ美人だし、どこの母ちゃんより若いし・・・なのに、父ちゃんはプー太郎だし、天パだし、足臭いし・・・」

「「おうおう言ってくれるねえ。
お前だって天パだろォが。」

「?!」


俺の後ろから不機嫌そうな声が聞こえてきた。

その声の主に頭を掴まれぐいと抑えられる。




「あ!おかえり銀ちゃん!」

父ちゃんの帰宅に母ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

「なんだ。もう帰ってきたのかよ。」

チッと舌打ちをしてから父ちゃんを見上げる。

「んだと、お前の大好きな父ちゃんのお帰りだってのになんだその態度は?!」

父ちゃんはしゃがんで、ソファーに座る俺と目を合わせた。

「ちがうもーん。俺が好きなのは母ちゃんだもーん」

「おーっと、残念でしたァ。母ちゃんは父ちゃんのものですぅ。」

「でも俺の方が母ちゃんに愛されてるもーん」

「いや、俺の方が愛されてんだよ。
だから毎晩・・・グハッ!」


父ちゃんが何を言いたかったのか俺にはよくわからなかったが、父ちゃんが言い終わる前に母ちゃんは顔を真っ赤にして父ちゃんの顔面に煎餅の入っていた皿を投げ付けた。


「子供の前で何言ってるアルか!
このアホ天パ!」

母ちゃんの剛速球(まあ皿なんだけど)で、父ちゃんはどうやら気を失ってしまったようだ。
鼻血を垂らしながら床に倒れこんでいる。

母ちゃんのバカ力は恐ろしい・・・。



ふうと溜息をついて、母ちゃんはまたソファーに腰を掛けた。



「銀楽・・・銀ちゃんは確かにこんなんアル。ちゃらんぽらんだし、めんどくさがりだし、だらしないし・・・ダメなとこだらけのマダオアル。
・・・でも、銀ちゃんは本当は真っすぐで、強い・・・侍アル。
銀楽だって本当はわかってるんでショ?」


そう言ってまた優しい笑みを浮かべて俺を見つめた。


「・・・・・。」


俺にだって本当はわかっていた。



父ちゃんは、いつもはだらしないし、いい加減だし、プー太郎だけれど・・・いざって時、すごく頼もしくて、本当はすごく強い、・・・本当の侍なんだってこと・・・。



「・・・・。
うん・・・だって俺も父ちゃんのこと好きだもん・・・。」

俺が俯きながら小さい声で呟くと、ふふふと笑って母ちゃんはゆっくりと立ち上がり、そっと俺を抱き締めた後、何度も優しく頭を撫でてくれた。






「・・・さて、銀ちゃんが起きる前に夕ご飯の準備しなくちゃネ。」

そう言って隣で横たわる父ちゃんに薄い掛け布団をしてやった後、台所に向かって歩き始めた。
俺も母ちゃんについていった。



「母ちゃん、俺も手伝うよ。」


「マジでか?!ありがとネ!」

「だって卵をご飯に掛けるだけだろ?」

「失礼アルなァ!
ちゃんと醤油も混ぜるネ!」

そう言って俺達は顔を見合せて笑った。


父ちゃんの寝顔も心なしか笑って見えた。




fin

2009.5.31

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