タイムトラベル
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俺は比較的楽なスタイルが好きだ。服も花柄のブラウスに白いズボン。二枚だ。そして髪もいじらず。アクセもしない。
…ここまで言ってわかるだろうが、面倒なことは嫌いだ。
「というわけで、おじさん達にも働いてもらいます」
「おじさん?」
「あ、失礼しました信長様」
彼等にも働いてもらうことにした。初めに言ったのだ、働かざるもの食う可からずと。お殿様とて現代ではただのおじさ…おじ様だから。
「ウチは酒屋です。酒を売る、商品を並べる、検品…ま、ぶっちゃけこんな感じ」
「教われば我には容易いもの」
「俺は重労働をした方がいいな」
「ワシは酒を売ってみたいぞ!栗よ、教えてくれぬか?」
やりたいものを言わなかった信長さんは検品ね、決定。俺は三人に仕事を言い渡し、開店の準備をした。
「時計の10…ここね、ここになったら店を開くよ。はい、急いで掃除!」
殿様に掃除を強いる俺って…。少し考えたところで止めた。それぞれに箒、雑巾、ハタキを渡し、俺はカウンターのところにある椅子に腰を下ろした。
「お前は何をするんだ」
「昨日出来なかった家計簿書くの。結構大変なんだよー?」
ここのところ…というより二日間なのだが、店を断りもなく休日にしてしまった上に仕事を何もしていなかった。昨日は有り難いことに、酒は送られてこない日だから良かったが、家計簿をやっていない。早めに終わらせなければ、検品に間に合わない。(最低検品が終わるまでに書けばいいが)
「む、鼠か」
…鼠?
チュー、と俺の足元で物体が泣いた。
「…っ!!!」
叫び声を上げなかっただけ褒めてくれ。しかし、勢いよく立ち上がってしまった為に椅子は倒れる。終いには、物体が一歩近付いてきた。
「たす、けて!!」
咄嗟の行動は、後に自分さえも驚かせる。俺はたまたま近くにいた(そう!たまたまだ!)秀吉さんに抱き着いてしまった。
「…栗は鼠が苦手なのか」
だが、秀吉さんは俺を軽々と持ち上げてくれて、物体のいる地面から離してくれた。その間に信玄さんが鼠を外に放って、そこは安全地帯となる。ふう、と息をつくが、だんだんと状況を理解していく。
「もう大丈夫だぞ」
「…わあああああ!!!」
恥ずかしさで俺は結局、絶叫した。