ゆめ
□澄んだ心の臓
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「澄んだ心の臓」
私より何回りも大きい彼の膝に座り、後ろから抱かれる。短い髪を梳かれ、手を撫でられるのはいつものことだった。顔の割に、この男は接触が好きだ。
「…真太郎、おじいちゃんみたい」
「なっ…失礼なのだよ…!」
なんて言うのは照れ隠しで、この男にこうして優しくされるのが好きだった。
「中学生はもっとソフトな付き合いだと思ってたんだけど、違うのかな」
「他人がどうこうと言うのは興味ない」
「そう言うと思ったよ」
ぎゅうと後ろから抱きしめられ、頭の上に男の頬が押し付けられる。こいつ、私をさらにミニマムにさせる気か。横も縦も締めやがって。
「好き、なのだよ」
男の言葉はとても澄んでいた。澄み切っていて、私には少し息苦しい。私は少し笑ってから、抱きしめている手を撫でた。
「…知ってる」
それもこれも、全て忘れた思い出。