ユメ

□眠りませう貴方様
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「眠りませう貴方様」




煙のにおいが部屋を漂い、思わず顔をしかめてしまった。それを見た彼は眉を上げ、それから笑って煙草を灰皿に押し付けた。

「悪い、つい癖で吸っちまった。幸村は煙草が苦手だったよな…流石、鼻が利く」
「すみませぬ…」
「気にするな」

何年経っても変わらないおどけた笑い方が自分は好き。でも本当はもっと好きな笑い方がある。優しくて、愛情がある笑い方。

「幸村、膝貸してくれ。眠い」

何も言わずに床に腰を下ろしたら、彼の頭が膝に乗った。乗った途端に、じわりと暖かさが伝わってきて心臓まで到達する。自分の手は無意識に彼の柔らかな黒髪を撫でていて、体中から彼の眠気を吸い取っているような気分になった。

「佐助が来たら起こしてくれ」

それまでどうかこの暖かさを俺にください。もう一度髪を撫でてから、自分も目をつむった。






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