ユメ

□脳髄が疼く
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「脳髄が疼く」





予測なんてできなかった。だから僕は現在、何故彼を押し倒してしまったのかがわからない。彼も珍しくぽかんとした顔をしている。だがそれも一瞬。いつもの飄々とした顔に戻ってしまった。惜しいと思った自分がいることに気付く。

「秋彦君。どうしたんですか」
「さあ、わかりません」

口を開いて言葉を発する度に動く舌が妙に官能的で、まるで全身が性感帯になったかのようにぞくりと震えた。

「これはもしや私も間男になってしまうのかね。困った。ややこしくなります」
「それは千鶴子と僕の間男ということか。ならば僕は君と彼の間男になるだろうね」

くすくすと笑う声がまた官能的に聞こえる。どうしたものか。頭でもおかしくなったのか。自分には妻君がいるというのに。

「あら」

その妻君が音もなく現れた。我が妻君ながら、少し変な女性であるとつくづく思う。(実際、そんなことを言っている場合ではない。だが、妻君は妙に嬉しそうな顔をしているために素直にそう思えなかった。)

「貴方、狡いですわ」
「何が狡いと言うんだい、千鶴子」

妻君はゆるりとした仕種で腰を下ろして彼の頬に触れた。先刻とは違う、少し焦った顔になる彼に、脳から作られた麻薬がじわりじわりと快楽となって全身に伝わった。

「どうして私も誘ってくれなかったんです」

くすりと笑う妻君につられて自分も笑った。








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