ユメ
□肺呼吸
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「肺呼吸」
頬に触れれば、いつも以上に暖かい。否、熱いという表現の方があっているであろう。冷たい水に手拭いをつけて、それを絞って水気を多少残し、それを彼の額や首に滑らせた。
「…来て、いらしたのか」
「ええ。貴方が倒れたと聞いてすぐに」
ゆっくりと開けた目は少し潤んでいて、なんだか可愛らしかった。私は彼の寝巻きの胸元を少し緩めて、そこも手拭いで拭いた。
「申し訳ござりませぬ…」
「何をおっしゃいます。心配などせずに眠っていなさい。それが一番の治療法ですよ」
彼が息をするたびに上下する胸へ手を乗せる。生きた心地がする。人はこうやって生命を持続させるのか。なんて不思議なものだろう。人間の仕組みはわからないが、すごいということは理解できる。浅学な私にも、だ。(武家の彼に比べれば、私の知識など足元にも及ばないであろう。しかも彼は智将だと言うじゃないか)
「…どうなさいましたか」
「……いえ。ゆっくりおやすみなさい」
「承知、つかまつりました」
彼は大きく胸を上下させてから目を閉じた。
BGM:supernova/BUMP